国見英にジャージを借りる
青葉城西高校との練習試合当日。
バス移動中、翔陽くんの緊張が移ったのか少しだけ胃が痛くなった。というより多分、みんなに会うのに緊張してるんだろうなぁ。
「みすずも青城に行った影山のチームメイトとは仲良いの?」
「そうですね…私なにも言わずに烏野に来たので、なんて言われるか、ちょっと怖くなって来てます」
「なにも言わずにって、そりゃあ心配するでしょうよ」
「……デスヨネ」
「うわぁー!!うおおお!!!」
「龍センパ……翔陽くんん?!」
盛大に龍センパイに吐いている翔陽くんがいた。
あわててビニール袋とお水を持って行くと、すみません…と譫言のように呟きながら翔陽くんが青ざめた顔をしていた。
「皆さん窓開けてもらっていいですか?翔陽くんちょっと外出て涼もっか。龍センパイこの袋の中に服入れてください、青城で水場貸してもらって洗いましょう」
「みすずちゃん、片付けやるから日向頼める?」
「あ…ハイ、あの予備の水まだあるので、バスのシート拭くのに使ってください」
「うん、ありがとう」
「翔陽くんちょっと触るね」
肩を支えながらバスから降りると、魂の抜けきった翔陽くんと路肩に座る。
気分が楽になるように、気持ちが楽になるように、背中をなるべく優しく撫でる。今は緊張とプレッシャーもだけど、申し訳なさでいっぱいだろうなぁ。
…いや、吐いた相手がまだ龍センパイで良かった。
「みすず……ごめん、こんな、格好悪いところ…」
「はは、気にしないの。私が体調不良で吐いちゃったら、翔陽くんもきっと助けてくれるでしょ」
「それはそう、だけど……」
「それに格好いいところは、プレーで見せてもらうから。今はちょっと深呼吸でもして、落ち着こう」
「うん……ありがとう」
車内から2人を見ながら、菅原が感嘆のため息を漏らす。
「いやー…みすずちゃん凄くね?対処早すぎ」
「北一の時、練習キツくて吐くやつ多かったから慣れたんじゃないっスかね」
「なんかちょっと日向が羨ましい……ッ!」
「お前はさっさとジャージ脱げ!!」
◇◇◇
「俺……幻でも見てんのかな」
「はい、俺も見えてます」
水場で黒いジャージを洗ってるみすずがいる。
なんでここに?なにしてんの?てかなんでジャージ洗ってんの?とか聞きたいこと山ほどあるんだけど。
「お前、烏野に行ったのか」
「! ぴぎゃあっ」
「「!」」
いきなり声かけられたことに驚いた拍子に奇声を上げて自分に水をぶちまけていた。
…え、なにしてんの、この子。
「い、岩泉センパイ…英くん…」
「悪かったみすず!大丈夫か?!」
「いやみすずがドンくさいだけでしょ」
ちょうど持っていたまだ使っていないタオルを頭から被せてやると、ありがと、と言って髪を拭き始めた。
ジャージの前を閉めてたようで辛うじてTシャツまでは濡れていないみたいだけど、まだ半袖じゃ寒いはずだ。
「これ、着てなよ」
「え、でも……」
「乾くまで寒いでしょ」
「…ありがとう」
黒いジャージから青城の白いジャージに羽織り直すみすず。
うん、絶対にこっちの方が似合ってると思うし萌え袖GJ。岩泉さんの視線が少し痛いが、ここはみすずの可愛さに免じて許して欲しいところだ。
「つか…お前なにやってんだ?こんなとこで」
「あー…ちょっと色々あってジャージ汚してしまったので、洗わせて頂いてました……」
「…まさか烏野に居るとはね」
「……」
「影山か?」
「いえ、飛雄くんは……嬉しい誤算、ですかね。本人も一応白鳥沢受けてたみたいですし、」
じゃあ尚更どうして。
及川さんの次に期待していたのは間違いなく影山飛雄だった。けど、あいつが理由じゃないならなんなんだ、誰なんだ。
「とりあえず戻るか。烏野のももう合流してるぞ」
「あ、はい…英くんこれ借りてていいの?」
「良いけど」
そっちのメンバーは良い顔しないと思うけどね、特に影山が。
「烏野マネ2人いんだから、こっち手伝ってくれよ」
「ええっ、岩泉センパイなんか徹センパイみたいなこと言いますね!」
「…俺だってそれなりに顔見てた奴が急に来なくなったら寂しくなるんだよ」
「えっ、えっ…英くん!岩泉センパイがカワイイ!」
「確かに」
「オイ国見ィ、及川にだけは言うなよ」
国見英にジャージを借りる
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