エースへのトス






旭センパイのスパイクがブロックに阻まれて、床に落ちそうになった瞬間その隙間に、夕センパイの手が滑り込んでボールは高く上がった。


ブロックフォロー。

部活ができない間、ひたすらその練習をしていたらしい夕センパイが、繋いだ。



「壁に跳ね返されたボールも、俺が繋いでみせるから!だから…だからもう1回!トスを呼んでくれ!!エース!!」



夕センパイの叫び声が、ぐっと胸に突き刺さる。

孝支センパイはまだ迷っているようだけど、ここで旭センパイに上げなきゃ、旭センパイが打たなきゃ、きっとずっと立ち止まったままだ。



「菅原さん!もう1回!決まるまで!!」

「ドSだねえ、王様」



飛雄くんが、孝支センパイの背中を押す。

それでもあの伊達工戦は大きなトラウマになっているみたいだ。迷いが消えない。だったらもう、ここは、あなたが引っ張ってあげるしかない!!



「エースがっ!立ち止まるなぁあッ!!!」

「っ! スガァアアアっ!!!もう1本っ!!!」



大きく手を上げて、トスを呼んだ旭センパイ。

孝支センパイが綺麗にトスを上げると、それは吸い込まれる様に旭センパイの手に収まり、凄まじい音を立てて床に叩き付けられた。


3枚ブロックを打ち抜く、強烈なスパイク。
ああ、やっぱりあなたは、烏野のエースだ。



「繋心く…」

「なッ…なんでおま、泣いて…人のジャージで拭くな!」



近くに立っていた繋心くんのジャージを掴んで、思わず流れた涙を拭う。こんなところで泣いてる場合じゃない、ちゃんと、見ないと。



「みすず」

「?」

「「「ん!」」」



旭センパイに名前を呼ばれて、ジャージから目だけ覗かせると、旭センパイ、孝支センパイ、夕センパイがぐっと拳を突き出していた。

それを見て、またこみ上げて来た涙をぐっとこらえて、笑顔と拳を返した。



「お前…馴染むの早くねぇか?」

「嫉妬?嫉妬ですか繋心くん」

「アホか」

「皆が優しいんだよ、あったかいのすごく」

「良かったな」



くしゃくしゃと頭を撫でられる。
繋心くんの中では私は小学生のままなんじゃなかろうか。



「先生…ちょっと羨ましそうにすんのやめてくんね?」

「いや、だって…立ち位置が逆だったら、僕のジャージで、」

「お前、先生まで懐柔してんの?」

「言い方!やめて!」




エースへのトス


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