月島蛍と帰り道





日向が顔面にスパイクをくらった時、動揺していた姿がなんとなくいつもと違って見えた。

だから、なんとなく、この前の話の原因がそこにあるんじゃないかと思った。



「ねえ、足もう大丈夫なの?」

「うん、ずっと座ってたから結構平気。多分明日にはもう治ってる」

「妖怪?」

「ひどっ」



少しだけびっこ引いて歩くから、皆より後ろを歩くその姿になんとなく合わせて並んで歩く。

まあそもそも僕たむろして帰らないし。



「蛍くん優しいね」

「は?」

「あわせてくれてるんでしょ」

「…別に、前がうるさいから丁度いい」



めずらしく山口もあの騒がしい輪の中に入っているから、後ろは僕たちが話さなければとても静かだった。

ちらちら視線を感じるのは、僕から話し始めるのを待っているのだろうか。でも聞いていいのか?聞いて欲しいわけでは無さそうだけど。



「蛍くんはさ、名前、呼んでくれないよね」

「…は?」

「ねえ、とかだもん、いつも」



思っていることと全然違うことを言われて、変な声が出た。

別に意図的に呼んでいないわけじゃない、呼ばなくても会話成り立つし。



「君みたいにすぐ他人にしっぽ振れないからね」

「なっ…人をわんちゃんみたいに!」

「だって君、犬みたいじゃん」

「それ貶してる方だよね?!わんちゃん可愛いけど、貶してる方だよね!」



大体、この学校で初めて会話した時からそうだ。

僕は一方的に知ってたけど、君は知らなかったはずだ。なのに、ぺらぺらと話しかけて来たりして、入学式初日なのに。そんな簡単にパーソナルスペースに足踏み入れて来る人なんて初めてだった。



「じゃあ、もっと仲良くなろーっと」

「…何でそうなるの」

「だってまだ名前で呼べるような仲じゃないからってことでしょ?だから仲良くなれば呼んでくれるかなって。同じクラスだし、部活も一緒だし。チャンスいっぱいあるね!」

「!」



にっこり満面の笑み、と言うのを浮かべて僕を見上げる。やっぱり犬だ、小動物を、可愛いと思ってしまうのは仕方の無いことだ。

なんかムカついたから軽くチョップすると、またひどいってへらへら笑ってる。



「あ、そうだ今度部活休みの日、ケーキ食べ行こうよ!美味しいところ教えてもらったんだけど、1人じゃ寂しいからサ」

「だからってなんで僕を誘うのさ」

「あれ?ケーキ好きだって忠くんから聞いたんだけど」

「…山口」



なんでも僕のこと得意気に話して…!

でも今回はまあ、良しとしよう。部活休みの日がいつ来るか知らないけど。



「君バレー部以外に友達いないの?」

「え?やっぱりそうなのかな、私バレーボールのことだとぐいぐい行けるんだけど他のこととなると駄目なんだよね…」

「……いや、どう考えてもクラスの中心でしょキミ」

「え゛っ、やめて!そんな!ボスみたいに!」

「そこまでは言ってない」




月島蛍と帰り道


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