影山飛雄に拒絶される






お昼休み、喉が渇いたみすずは自販機に来てみると、同じく飲み物を欲している飛雄がいた。



「飛雄くんやっほ」

「おわっ」



みすずが後ろから勢いよく腰をがっと掴むと、ちょうど飲み物を買うところだった飛雄はそのはずみで、目的のボタンとは大分ずれた場所を押してしまった。

むなしくガコン、と中身が落ちて来る。



「…いちごミルク?」

「お前のせいで違うもん買っちまっただろが!」

「えへ、ごめんね…どれ?ぐんぐんヨーグル?」

「…おう」



みすずは可愛らしい財布から小銭を取り出し、ぐんぐんヨーグルのボタンを押して、中から出て来たパックをはい、と差し出した。

代わりにもらったいちごミルクにストローを差して近くのベンチに座ると、飛雄もそのまま隣に腰かける。



「いちごミルクあま」

「本当はなに買いに来たんだよ」

「ぐんぐんヨーグル」

「……飲むか?」

「えっいいの!」



ずい、と差し出されたぐんぐんヨーグルのストローに口を付けようとして、ハッとする。



「やっぱいい」

「あ?なんだよ」

「さっきリップ塗り直したのわすれてた」

「んなもん別に気にしねーよ」

「そ?じゃあ、遠慮なく」



ちゅ、と吸い付くとピンク色のリップが少しだけストローに残った。

みすずは良いと言われたのでさして気にしていなかったが、飛雄は一度ごくりと唾を飲みこんでからストローを口にした。



「…そういや、お前も泊まんの?」

「うん。潔子センパイ帰っちゃうらしくて、ほんとはだめって言われたんだけど、どーしてもってお願いしたの」

「澤村さんに?」

「んーん、武田センセ」

「そーか」



ちゅう、とジュースを吸う音だけが聞こえて来て、なんだかそわそわして来た飛雄は何か話題はないかと試行錯誤していた。



「な、んでそんなに泊まりたかったんだ?」

「あれ、飛雄くん知らないっけ?私1人暮らししてて寂しいから」

「初耳だぞ」

「そっかぁ、知ってると思ってた…」



1人暮らし。

家族の話そういやあんまり聞いたこと無かったように思う。卒業式の日も早々にバレー部にいたし、なんなら及川さんたちに囲まれてた気がする。



「ねえ」

「…なんだよ」

「なんか今日堅くない?なんで?飛雄くん、なんかあったの?」



下から覗き込んで来る不思議そうな顔に、胸がドっとする。な、んだこれは。

みすずはいたって、いつも通りだ。
さらさらの髪からシャンプーの甘い香りがする、顔はまあもともと可愛い方だとおもう、けど、さっき言ってたリップ?がなんか、てらてらしてて、え、えろ……



「むんっ」

「ぐえ、」

「みすずのくせにっ!生意気だボケ!!」

「にゃ、にゃにが!!!」



邪な感情に流されそうだったところを、がっと片手でみすずの両頬を鷲掴むことによって、押しとどまった飛雄。

わけもわからず顔を掴まれているみすずはむっとして、飛雄くんの腕を掴む。



「……」

「……?」



数秒みすずの顔を見たあと、ぱっと手を離すと飛雄はベンチから立ち上がった。

理不尽な扱いを受けたみすずは二度と座らせてやるまいと、どかっとベンチに座り直すと両頬を撫でながら飛雄を見上げた。



「お前まじで泊まるの?」

「なんなの!駄目なの?!」

「いや…そうか。……あんま俺に近付くな」

「は…?」



幼馴染まではいかないものの、中1からの仲であるみすずをそう言う対象として見てしまった自分を受け入れらない飛雄は、そのまま早足で校舎へと戻った。

残されたみすずは、ぽかんと飛雄の背中を見つめていた。





影山飛雄に拒絶される


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