国見英と帰り道
「みすず帰るよ」
「んー…あれ、飛雄くんたちは?」
「影山は知らんけど、金田一は呼び出しあるから先帰ってってさ」
「呼び出し?えっ、こ、告白とか?!」
「告白、はは、そうかも」
「ひえ……勇太郎くんも隅に置けないなあ」
「(なんてね)」
見えないところでにやりと笑った国見は、みすずと2人で帰るべく、金田一にそういや顧問が呼んでたーと嘘を吐いて追い払ったのだった。
みすずはと言うと、国見の嘘に気付くこともなく、明日詳しく聞かせてもらおーと呑気なことを呟いている。
「飛雄くんも最近一緒に帰ってくれないね」
「まあ、アイツにも色々あるんじゃね」
「ふうん?」
あんなことを言った後だが、飛雄とは学校にいる間は至って普通に接している…はずだ。
朝の挨拶もするし、お昼も一緒に食べるし、部活中だって何ら変わりなく過ごしている。ただ帰り道だけは、隣に並んでくれなくなった。
「まあ、俺にとっては好都合」
「ケンカでもしたの?」
「俺と?」
「…わかってて聞いてるでしょ」
「あ、バレた?」
「バレるよ、ハイハイ。たぶん私のせいデス」
「何言ったの?影山に」
「うーん、本当のこと?言った」
「抽象的だな」
「英くんなら分かるでしょ」
「……いや、皆もう薄々分かってると思う」
飛雄は、天才だ。
だからこそ、チームプレイの要となるセッターにはまるで向いていなかった。
彼は出来すぎてしまった、何もかも。それ故に周囲をおいてけぼりにするセットアップをし、着いて来れなければ何故もっと速く動けないのかと叱責した。
一生懸命なだけ、バレーボールが大好きなだけ。
そんなことはみすずだけじゃなく、チームメイトも分かってはいるが、それだけで何もかも上手くは行かないのがバレーボールだ。1人だけが頑張っていたって、強くたって、勝てない。
私は自主練をしている飛雄くんを見るのは好き。
誰よりも一生懸命で、努力家。特に彼の放つサーブは徹センパイにだんだん近づいて来ているくらいで、見る度に背筋がぞわっとした。
けれど試合形式になると、途端に駄目になった。飛雄くんの速攻をドンピシャで決められるスパイカーはたぶん、飛雄くんしかいない。周りも合わせたくても合わせられない。
私は、そんな飛雄くんの、チームの姿を見ていられなくなってしまった。
そして気付けば彼には、チームメイトによって不名誉なあだ名が付けられてしまっていたのだ。
「飛雄くんは、徹センパイの何を見てたんだか」
「…それ王様に言ってやれば」
「言えないよ」
英くんのスタイルは飛雄くんの様にがむしゃらに一生懸命にやるんじゃなくて、抜けるところは抜くって感じだから、この2人は余計にソリが合わないんだよなあ。
もし飛雄くんが徹センパイの様にスパイカーの実力を引き出せる様なセッターになったら、もっともっと面白くなるのに。
だって英くんも、勇太郎くんも、私が見て来た同学年のプレーヤーの中ではかなり強い選手だ。ああ、もったいない。
「総体も着いてくんの?」
「言いかた〜、まあ、もちろん同行させていただきます」
「俺レモンのはちみつ漬け食ってみたい」
「…え、何それ。作ってってこと?」
「ただのファンなんだから、それくらいしてもらわないと。」
「だから言いかた!仕方ないなあ…て、英くんいる?そんなに疲れないでしょ」
「俺をなんだと思ってるの」
「サボり魔」
「しばく」
国見英と帰り道
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