影と太陽と朝ご飯
ねむい。
朝ご飯を準備しながら、目をこする。
お泊まりするので朝ご飯作りは私の担当だった。ちなみに昨日どうやって部屋まで戻ったか全く覚えていない。そもそもUNOの勝敗も知らない。まあ私は優勝だったけど。
誰もいないし、と適当にまとめた髪に、寝巻きのままエプロンだけ付けて、みそ汁をぐるぐるかき混ぜながら鼻歌をうたう。
いつも1人分、まとめて作っても、よそう時は1人分だから、眠たいけど皆の分作るのはなかなか楽しい。大家族のお母さんってこんな感じなのかなー。
「…はよ」
「あ、飛雄くんおはよ。ランニング?」
「おう」
ランニングウェアで食堂に現れた飛雄くん。
朝は欠かさず走っていると聞いていたけど、合宿の時まで…。えらいなぁ、うちの子は。おにぎりでも持たせてあげようか。
「いい匂いする」
「おみそ汁つくってる」
「うまそ」
飛雄くんもまだ眠いのか、いつもより更に言葉が単調だ。
ふらふらと寄って来たかと思ったら、私の背後からひょこっとキッチンを覗き見た。かわいいな、朝の影山飛雄。お母さん気分の私は、ぽんぽんとその頭を撫でてみる。
「今ちょっと食べる?」
「良いのか?」
「うん、おにぎりする?」
「する、してください」
こくこくと頷くのがまた可愛らしい。いつもそれでいてほしいところだ。
お釜から、ほかほかのご飯を小さめのお握りにして、おみそ汁と一緒に出した。ランニングするなら少なめの方がいいよね。まあ、大飯食らいだからあんまり関係ないかもだけど。
私も朝ごはんの準備は一先ず終えたので、飛雄くんの前に腰掛けてみる。
「いただきます」
「召し上がれ」
「……うめぇ」
「飛雄くん北一の合宿の時も私のおにぎりいっぱい食べてたよね」
「おー…腹減ってたし、すげぇうまかったから」
「ふふ、そう言ってもらえると作りがいがありますね」
「……」
頬杖をついて眺めていると、飛雄くんの瞳が私を捉えた。
なんだなんだ、化粧してないからあんまり見ないでください。後でちゃんとやりますから。
「なんか」
「なんか?」
「赤ちゃんみてえ、おまえ」
「…はぁ?」
「なんかいつもと、ちげー」
「あー……すっぴんだからじゃない?」
「すっぴん……ふうん。」
それだけ言うとまたおにぎりを食べ初めた。
いーよいーよ、どうせ私は田舎のしがない女子高生よ。あかぬけられないし、イモですよイモ。ていうか思春期真っ只中に惜しげも無く異性にすっぴんはともかく寝起き晒せる私もどうなの。そりゃイモですよ。
「? なんで怒るんだよ」
「怒ってません」
「怒ってんだろ」
「怒ってません」
「……かわいい、って意味だ」
「は?」
「いつもはなんつーか、完成されてる感じだけど……うーん、バカっぽくて?かわいい」
「それ、褒めてんの?貶してんの?」
「褒めてるに決まってるだろボケ」
「それは、ありがとーございますー」
空になった食器を手に取ると、俺がやるのにと言われた。
良いんです、良いんです。私は今日みんなをサポートするためにここに居るんですから。
「大丈夫だから、早くランニング行っておいでよ」
「…サンキュ。ごちそうさまでした」
「おそまつさまでした」
「いってくる」
「いってらっしゃい」
ゆらゆら〜と手を振って見送れば、片手を挙げて返してくれた。
「なんか食いもん〜……」
「お、翔陽くんも走るの?」
続けて現れた翔陽くんに笑いがこぼれる。
これ飛雄くんと鉢合わせてたら、また競走して出て行ってたんだろうなぁ。
「あ、おはよ〜みすず」
「おはよう翔陽くん、なんかふわふわしてるね」
「んー、昨日いつもより遅く寝たからちょっと眠い」
「えー、かわいい」
「かっかわっ、かわいくないよ!!」
ばばっと両手で大きく否定されてしまった。
私も眠たくてつい口からかわいいがとび出てしまった。あぶない、あぶない。
翔陽くんもお腹空かせてそうなので、飛雄くんと同じようにおにぎりとおみそ汁を出してあげると、目をきらきら輝かせていた。
「みすずって料理もできるし、勉強もできるし、バレーもうめーし…最強だな!」
「えー、そんな超人じゃないよ、どれも人並みだし」
「遠慮することねーのにっ!いっただっきまーす!!」
うめえ!とそれはそれは美味しそうに食べてくれる息子第2号が可愛くて可愛くて、また頭を撫でてしまう。
食べながら、ん?とこっちを向いた翔陽くんの口元にはご飯粒が着いていた。いや、ベタ!でも可愛い!許せる!可愛いは最強!よって翔陽くんが最強!
ご飯粒取ってあげると、恥ずかしそうにはにかまれた。
「翔陽くん…私の息子になりませんか」
「ええっ、それなら、旦那さんがいい」
「えっ」
「えっ」
2人して顔を赤くしたのでした。
影と太陽と朝ご飯
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