月島蛍に嫌いな物を食べさせる





「ねえ」

「なに?」

「…さっきから僕の皿に人参よこすの止めてくれない?」

「気のせいでは?」

「バレてるからね」



まあ、最初は気のせいだと思った。

だけど明らかに始めより増えている人参の量に不思議に思って隣を盗み見たら、しれっと自分の分の人参を僕の方へと移していた。小学生か。



「好き嫌いとかやめてくれる?」

「だって!人参!おいしくないんだもん!」

「子供じゃないんだから食べなよ」

「忠くんツッキーがこわい」

「みすずちゃんが嫌いなもの食べないからでしょ〜」

「わ、忠くんは蛍くんの味方ですか」

「じゃあ僕が食べようか?ツッキー」

「…そんなに何回も皿移すなんて行儀悪いでしょ」



ニヤニヤしてこっちを見るな。
大体お前が考えてることは分かるからな。そうやって言えば僕が食べてあげるとか思ってるんだろ。



「ハァ、代わりに食べたら何くれるの?」



…まあ、その手に乗ってやらないことも無い。



「ツッキーも素直じゃないなぁ」

「うるさい山口」

「等価交換デスカ…何、あ……食後のプリン」

「2個も要らない」

「えー…じゃあ、何ほしい?」



へえ、僕に選択権くれるんだ。
無意識に口角が上がるのが自分でも分かった。



「ひっ、蛍くんが悪い顔してる!」

「みすずちゃんが悪い」

「や、やっぱり自分で食べるからだいじょ、」



取られる前に僕の皿に乗せられた人参を一気に食べると、大きな声で叫ばれた。うるさいなぁ、もう。



「これで、等価交換だね」

「くっ、何ですか、何をご所望ですか月島様」

「……ああ、じゃあ」

「(ごくり。)」

「今度のデート、ケーキおごりで」

「「「「デートォっ?!」」」」

「お、おい!どう言うことだ月島!!」

「天使ちゃんとデートだとォっ?!」

「もごぁもごっげほっげほっ」

「月島のやつ、抜けがけしやがって」

「スガも段々みすずガチ勢になってない?」

「いやでも、“デート”は聞き捨てならんな、みすずから聞いてない」

「父親かよ」

「つ、月島とみすずって、カ、カプ…!?」



予想通りすぎる周りの反応につい笑いがこぼれる。



「なんだ、そんなことかぁ…良かった」

「ふうん、もっと凄いのが良かった?」

「っ、からかわないで!」



少しだけ赤くなった顔を背けられた。
へえ、可愛い反応することもあるんだ。どっちかって言うといつも君が僕をからかってると思うんだけど。



「ツッキーも意外と子供だね」

「うるさい山口」

「うおおいっみすず!!デ、デート行くのか?!月島と?!」

「あああ夕センパイご飯粒飛んでますから、飲み込んでから話してください」

「なん…っ天使ちゃ……神聖な……穢れて……」

「龍センパイ拝みながら泣くのやめてください」

「みすず!お、俺とは、デ、デ、デェト」

「影山は良いだろ中学から一緒なんだから!俺と行くべ!」

「いやそこは部長の俺が先に行くべきだろ、父親ポジだし」

「ハイハイ、なんなんですか、皆してデート、デートって。え?皆さん彼女とか居ないんですか?!」

「「「「「……」」」」」

「や、あの………スミマセン」



今日の夕食はそれからずっと静かだった。




月島蛍に嫌いな物を食べさせる


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