西谷夕のお風呂上がり
「あ、夕センパイだ」
「おー、みすず。っふ、風呂上がりか」
「……ドキドキしますよね、お風呂上がりってなんか。いつもと雰囲気違って」
「なっ…そ、そーだな!」
夕センパイは持っていた缶ジュースを勢い良く飲んだせいで噎せている。
あはは、センパイ可愛いなあ。初日も言ったけど前髪下ろしてるとホントにいつもと雰囲気が違って、可愛らしいし、イケメンだ。いや、普段もイケメンですけども。
「げほっごほ」
「大丈夫ですか?」
「っお、おう!!任せろ!!」
「(……なにを?)」
「ん゛んっ……ふぅ。みすずも、なんか飲むんだろ?」
「あ、はい。……え!大丈夫です!自分で買います!!」
「たまには俺にもカッコいいとこ見せさせてくれよな!どれ飲むんだ?」
「じゃあ…お言葉に甘えて、メロンソーダで」
「風呂上がりの炭酸うめーよな!」
「最高ですね」
がこん、と音がして、出て来た緑色の缶を差し出された。
それを受け取ってベンチに腰掛けると、夕センパイも少し距離を取って隣に座った。龍センパイだったら隣には座らなそうだなあ。2人って異性への態度が似てるわりに、意外とこういう時の対応が全然違うんだろうなぁ…私が潔子センパイだったら話は別かもだけど。
「夕センパイ」
「ん?」
「夕センパイはいつもカッコいいですよ」
「え゛っ、な、え、急に、なんだよ?!」
「さっき、たまにはカッコいいところ見せさせてって言ってたので、訂正します。夕センパイはいつもカッコいいです」
「……そ、そうか、うん、ありがとな」
「夕センパイ…?」
「いやなんか、いつもこう、女子にモテたい!とか、カッコいいって言われてえっ!って思ってっけど……いざ言われると、なんかすげー、恥ずかしいんだな」
隣を盗み見ると、ほんのり顔を赤くしながら頬っぺを掻いてる。
え、夕センパイって照れるんだ。なんかいつも発言が男前だし豪快だから、大きく笑ってありがとな!ってもっと快活に返されるもんだと思ってた。龍センパイといるとギャグっぽい反応になるのは、照れ隠しだったのかな。
「俺さ、ベストリベロ賞取った時いろんな人に声かけてもらったんだけどさ」
「そうでしたね、見てました」
「みすずが1番印象に残っててよ」
「え゛っ、私なにか失礼なことを……」
「違う違う、そうじゃねぇ。他の人はその時の試合の話をするんだけど、みすずだけは最初から、その先の話してた」
「…これからの西谷夕さんに期待してます」
「覚えてたんだな!そう、これから“も”じゃなくて、これから“の”って言われて、あー俺これで満足してる場合じゃねぇ、もっと頑張ってこの期待に応えなきゃって思ったんだよな」
たしか、私が中2の時で、他校の試合を散々見ていたからあんまり夕センパイのこと知らなかったんだよなあ。だから、その先も試合を見たくてそんな風に言ったんだと思う。
私の何気ない一言が、夕センパイの記憶に残って、こんな風に言ってもらえるなんて嬉しいなあ。
「み゛っ?!」
「ニヤニヤすんな、恥ずかしいから」
嬉しくてつい緩んでいたらしく、夕センパイに、頬っぺつままれた。
夕センパイにそんなことされると思わなくて、目を丸くするとそのまま頭ぽんぽんされた。
「みすずの期待ってさ、プレッシャーに感じねぇんだよな」
「そうなんですか?」
「なんつーか、背中押されるんだよな、押してくれると言うより」
「なんか、私…強引では……?」
「でも実際、伊達工の試合の時はそれですげー救われたんだ。みんな。まあ、旭さんはいなかったけど」
ありがとな!って頬っぺつまんでた手でそのままわしわし頭を撫でられて、なんだか温かい気持ちになった。
そう言うことを真っ直ぐに言えるところが、夕センパイらしいなあ。
「じゃあこれからもガンガン皆さんの背中押していきますねっ」
「おう!頼むぜマネージャー!」
「任せろください!!」
西谷夕のお風呂上がり
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