ゴミ捨て場の決戦(練習)





烏野と音駒の練習試合が始まった。

翔陽くんと飛雄くんの変人速攻は順調に決まっているし、おとりとしてもきちんと作用してる。けど、ゲーマーの研磨くんらしい「最初クリア出来そうにないゲームでも、繰り返す内に慣れる」という翔陽くんの動く範囲を誘導する指示で、走くんが翔陽くんにぴったりマークする担当になってからは、思惑通り段々と変人速攻にワンタッチする様になって来た。


何より、音駒の選手は全員しなやかでレシーブのレベルがかなり高い。大体のボールがセッターの研磨くんに綺麗に上がる。うん、繋心くんが言っていた通り。中でも衛輔センパイは音駒のリベロだけあって、目を見張るものがあった。



「ライト!」

「(飛雄くんがトス呼んだ!)」



試合中には滅多に見られない飛雄くんのスパイクにぞくりとする。

コースを見極めて打ったストレートは綺麗に決まった。はあ、ほんと飛雄くんオールラウンダーだなぁ。あ、孝支センパイがすごい顔してる。



「みすずも!見てたか?!」

「ハイハイ、見てたよ〜!カッコ良かった!」

「ヨシ」

「ほう、みすずは烏野の9番と付き合ってるのか?」

「え゛えっ、まさかまさか!」



猫又監督がニコニコしながら私を見ている。
さらっと名前で呼んでくれて嬉しいんですけど、勘違いをなさっている!とても!



「なんだ、違うのか。じゃあうちのメンツにもチャンスはあるってことだな」

「はえっ、猫又監督それは一体……」

「フッフッフ」



読めない、読めない人だ…!!
優生くんに助けを求めるように目を向ければ、苦笑いを浮かべている。


とりあえず試合に集中しよう。

うん、なんて言うか烏野と違ってとても安定感のあるチームって感じだ。て言うか研磨くん、やっぱり上手だなあ。さっきのフェイントもそうだけど、相手の動きや心理を読むのが得意って感じする。さすが参謀。

烏野も食いついている状況だけど、音駒のセットポイントになった。



「ああ、これは……」



夕センパイがレシーブしたボールは綺麗に飛雄くんに上がった。

翔陽くんはブロックを振り切って駆け出したけど、走くんもそれを追いかけて手を伸ばしている。

初めてあの変人速攻がブロックに捕まった。




◇◇◇



2セット目。

翔陽くんのスパイクが全然決まらなくなって、思い出したのは伊達工とのあの試合の風景。旭センパイの心が折れた、あの瞬間。

でも多分、翔陽くんなら大丈夫なはずだ。だって翔陽くんはここにいる誰よりも貪欲だから。



「笑った…!」

「ふふ」



これだから翔陽くんを見ることを、期待することをやめられない。

ふと、飛雄くんと話し終わった翔陽くんがこっちを向いた。烏野コートにいたらアドバイスしてあげられるのに。まあ、私が何か言わなくてもきっと翔陽くんは前に進んで行くと思うけど。

かっちりと瞳が合って、私は人差し指で自分の目の下をとんとんと指してみる。


翔陽くんは、見えるでしょう?



「!」



ハッとした顔で、翔陽くんがこくこくと頷いた。

そろそろ普通の速攻も出来るようにならないとね。使い分けることで、変人速攻がもっと有効的になる。それにはもちろん飛雄くんにも頑張ってもらわないといけないけど、飛雄くんなら今日中に合わせられるだろう。



「タ、タァアーーイム!!!」



飛雄くんのトスを見ながらスパイクを打とうとした翔陽くんに、慌ててタイムを取る繋心くんがバッと私を見た。

笑顔とピースを返すと、なんとも言えない顔をされた。あとは任せました繋心くん。



「本当に良いマネージャーだな。うちに来てもらいてぇよ」

「お、監督良いこと言いますネ。どう?みすずちゃん」

「私は烏野のマネージャーですので」

「黒尾フラれてやんの」

「…見てて気になるところあった?」

「うーん、総評は後でするとして…走くんは引き続き翔陽くんのマークで良いと思う、でもさっきより追い付くこと以外を考えて動いて大丈夫かな。あとは、」



研磨くんに言われて答えたけど、私が言わなくても研磨くん分かってそうだけどなあ。

ドリンクを優生くんと手分けして配りながら、1人1人少しずつコメントしていく。黒尾センパイがニヤニヤしてて、なんか嫌だなあ。



「やっぱりみすずはよく見えてるね」

「バレーボール好き故だね…あ、衛輔センパイ!超カッコいいです!レシーブやばいです、痺れます」

「まじ?それ超嬉しい」

「お、みすずちゃんは夜久派みたいだな」

「海までやめろよ〜!俺だってカッコいいでしょ、みすずちゃん」

「クロまだそんなに活躍してないでしょ」

「そうですね、これから期待してますよ、黒尾センパイ」

「厳しいねェ」



雑談も程々に試合が再開した。

2回目のタイムアウトの後も、しばらく翔陽くんのスパイクは決まらなかったり、返すのに精一杯だったりを繰り返していた。でも、なんて言うか少しずつだけど感覚を掴んで来ている気がする。

そう思いながら見ていたら、その時は突然来た。



「あっ……!」



そのボールはアウトだったけど、着実に翔陽くんは成長してる。

凄いなあ、翔陽くんはずっと進化していくんだ。それから飛雄くんも。普通なら何度も練習を重ねてタイミングを合わせていくものを、試合中にしようとしてるんだから。



「いい顔してるなぁ」

「あの2人にはずっと期待してますからね」

「あれが出来るようになりゃ、鬼と鬼だな」



鬼と鬼。たしかに。
なんか妖怪みたいだもんなあ、あの2人。




ゴミ捨て場の決戦(練習)


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