主将






「あれ?みすずどうした、なんか用事?」

「大地センパイ!」



昨日、潔子センパイの家にお邪魔した時に間違えて裁縫道具の一部を持って帰ってしまったので、お届けに上がった帰り、大地センパイに声をかけられた。

3年生のフロア、ただでさえ緊張するから知ってる人いるとほっとしちゃうなぁ。



「…なに笑ってんだ」

「あ、えっと、ちょっと緊張してて……大地センパイの顔見たらホッとしちゃいました」

「な……お前は、そう言うことをサラッと…」

「?」

「はぁ…で?なんか用事?」

「用事は済んでおりまして…潔子センパイに!」

「あぁ、清水か…。もしかして、バレー部のことでなんか悩みでもあるのか?」

「えっ」



眉を下げて、心配そうな表情を浮かべる大地センパイ。

なんで、なんでそうなります?!

や、でも…確かにバレー部以外の話を1年の私がわざわざここにしに来ないですよね…!でも、あのことはバレるわけには行かないし、どうしよう!?と焦って何も答えないでいると、大地センパイの手が頭の上にぽすっと乗った。



「ごめん、俺に言いにくいこともあるよな。無理に聞くつもりは無いけど…なんて言うか、もし変な気を遣ってるなら気にしなくて良いよ」

「あっ、えーっと」

「俺はもっとみすずに頼りにしてもらいたいって思ってるから」



そのまま優しく頭を撫でられている。

うっ…優しさが身に染みる。でもそうじゃない、そうじゃないんです大地センパイ。私は大地センパイは頼りがいのある男の人だと思ってます!思ってますよ、だけど今回は別件なのです話せないのです…。

うんん、何か切り抜けられそうな嘘をつくしか……。



「みすずはさ、結構なんでも1人でやろうとするし、しかもそれが出来ちゃうから心配なんだよ。だから困ったり、辛かったりしたら言って欲しい」

「…大地センパイ」

「って言うのは、まあ半分建前で」

「えっ」

「ほら、及川とか岩泉?とかとはもっとフランクな感じだっただろ?だから、なんか、俺にももうちょっと、あーなんと言うか…甘えて欲しいなって思って」



頬を掻きながらちょっと恥ずかしそうに言う大地センパイ。

甘えて欲しい…?

え、大地センパイには、私が徹センパイに甘えてるように見えてるってこと?な、なんと言うことでしょう…!岩泉センパイはともかく、徹センパイに甘えてる…?What?

あ、でも練習見学させてもらったり、ファンの子を差し置いて仲良くさせてもらったり…色んなワガママを許してもらえてる=甘えなのかも知れない。



「大地センパイはわがままな子が好きなんですか?」

「…ん?なんでそーなった?」

「え?」

「え?」

「あ゛ーっ!大地がみすずちゃんにセクハラしてる!!」

「はっ?!おいスガ!でかい声でなに言ってんだよ!」

「急にでかい声出すなよ、びっくりするだろ!」

「孝支センパイと旭センパイだ〜!」



孝支センパイを咎める2人の声が重なった。

ゆらゆらと手を振った私にいつもの爽やかスマイルで振り返してくれる孝支センパイと、胸の辺りを押さえながら手を挙げてくれる旭センパイ。男子バレー部の3年生が集結してしまった。なんだろうこの安心感、ここは体育館だったかな?



「誤解されたらどうすんだよ」

「誤解されるようなことしてる大地が悪いんです〜、ね!みすずちゃん」

「言ったそばからお前もやってるじゃん」

「俺は良いのー」



ぽんぽんと頭を撫でてくる孝支センパイ。モテそうだからなぁ…こんなところ見られたらファンの子に刺されたりしないかな。大丈夫かな。

あ、ちなみに徹センパイのファンの子たちとは色々あったけど、今はとても仲良しです。



「そう言えば何で3年の教室にいるの?」

「たしかに」

「潔子センパイに用事があったので!」

「なるほどね〜!」

「旭センパイ今日は髪下ろしてるんですね」

「あーそう…特に意味は無いんだけど」

「今度ポニーテールしておそろっちしましょ」

「おそろっちって」

「えーじゃあ俺もする」

「孝支センパイはちょんまげ」

「じゃあみすずちゃんも」

「はわ」

「おーかわいいかわいい」



にかっと笑った孝支センパイにきゅっと前髪を軽く束ねられた。女子の前髪は命に等しいのに。



「センパイたちはもうお昼食べたんですか?」

「うん、いま飲み物買いに行くところだった」

「え、今度一緒にお昼食べよーよ!」

「良いんですかっ」

「良いですとも!」

「じゃ決まり〜、大地も来る?…って何その顔」



孝支センパイの言葉につられて大地センパイを見ると、なんとも形容し難い表情を浮かべていらっしゃった。

苦虫を噛み潰したような?うーん…悔しそう?



「なんか距離感が…俺だけ……」

「大地が拗ねてる」

「父親ポジだからなぁ、大地は」

「お前らは黙れ」



確かに孝支センパイや旭センパイと比べると、大地センパイの方がまだちょっと緊張してしまうかもしれない。

だって主将だし、大地センパイて誰よりも主将!って感じだから…部活中じゃなかったら、そんなに畏まる必要もないのかな…?でもそもそもセンパイだしな…。



「大地センパイは、」

「ん?」

「私ともっと仲良くなりたいってことですか?」

「「直球」」

「…あー、まあ……うん、そうなるな」

「私もです!」




主将


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