八重歯の子は動物好きでした
「…よろしくお願いします」
居心地悪そうにぺこっと頭を下げた場地圭介。そうです彼があの場地圭介でございます。
ひえええ、や、八重歯…!八重歯めっちゃ可愛いんだけど!!またもや天使降臨してしまった。こんなに可愛らしいのに大きくなったら車とか燃やしちゃうんでしょ。やだ〜、絶対私のこと邪険にするんだろうなあ、今の内に可愛がっとかなければ。隣に座る真一郎を見上げたら目が合って、ぽんと頭に手を置かれた。
「仲良くしてやれ」
「うんっ」
「でも好きになるのは駄目だぞ」
「なにいってるの」
推しどんな顔してんのかなあと思って見てみたら、全然興味無さそうだった。てか寝てる、めっちゃ寝てる!同い年の男の子だよ?普通お友達になりたいとか思うんじゃないの?違うの?この2人が仲良くなっていく過程を間近で私は見たかったんですけれども、ねえ。あ、でも男の子ってあれか気付いたら仲良くなってました!みたいなパターン!それかぁ…は〜尊い。
額を床にぶつけるすんでのところで推しをキャッチして、揺すり起こすと寝ぼけ眼で私を見上げて来た。破壊力1000000%。
「アイツだれ」
「ば・じ・く・ん!」
「ばじ…」
ひと悶着ありそうだ。
◇◇◇◇
「あー!場地くんの!かわいい!」
「え……」
場地さんのリュックには可愛らしいわんちゃんのキーホルダー揺れていた。場地さんが動物愛でてる描写とかなかったけど…確か千冬くん宅に猫ちゃんいたような。じゃあ好きだよね?だって動物嫌いだったら千冬くん宅行かないもんね?場地圭介動物好き説やばい。
これはもう攻めるなら今しかない、大チャンス!
「わんちゃん好きなの?」
「…うん、好き。ライオンも」
「急に百獣の王」
「あんたも、すきなの?」
「うん、動物だいすきだよ…ほら!」
「あ!ねこちゃん!」
「はうっ…、!」
持っていたタオルの刺繍を見せると、目を輝かせて近寄って来た。
ね、ね、ねこ、猫ちゃんだって?!ねこ!じゃなくて、猫ちゃん?!!?お母様がそうやって呼んでるんですね!きっと!!どうしよう、子ども場地さんがどうしよう。可愛すぎます、君は本当にあの場地圭介かい?何をどうしたら、あんな漢!って感じになるんだい?何もう可愛すぎて吐きそう。
「天音、ちゃん」
「ひゃい?!」
「? 天音ちゃん、でしょ?おなまえ」
「ひゃい…そうでございましゅ……す」
「天音ちゃん、ねこちゃんみたい」
「え…そう?」
「かわいい」
にかっと笑って私を見上げる場地圭介。
ハッ…わたし生きてる?ご存命?よく生きてるな!こんなん真一郎と推しで耐性が無かったら、一発でコロリと天に召されているところでした。天音、正気になりなさい。場地さんに他意は無いんですよ。猫が可愛いついでに私なのよ。いやこっちの私は可愛いけども!やっぱり身内贔屓の可愛いとは違うじゃんんん!!!照れるじゃんんんん!!!
「オイ、なにやってんの」
「…しゃべってる」
「おまえだれ」
「さっきなまえ、よんだだろ!」
「天音はおれのだから、話すな」
「それはちょっと横暴すぎやしないかい」
「おーぼー……?」
「んー…おねえちゃんも色んな人と仲良くなりたいなってこと」
「ヤダ」
始まった。もうこうなると彼が譲ることはない。
わかる、佐野家って今エマちゃんがいないから女は私だけで母親が居ないからさ、私のこと独り占めしたくなる気持ちわかるんだよ。しかもめっちゃ嬉しい。でも駄目なんだよ、推しが執着するものを増やしちゃいけない。まあもちろん誰も失わせるつもりないけどさ…私までそこに入っちゃったら自分のことも守らなくちゃいけなくなってしまうわけで。いやみすみす死のうとか思ってはないけど、少しずつお姉ちゃん離れして欲しいなーみたいなー。
「ばじには、天音あげない!」
まぁああ可愛いから今は良いやあ!!!
「じゃあ、しょーぶだッ!」
「え?」
「オレが勝ったら天音ちゃんもらうからな!」
「は?」
「のぞむところだ!!」
え、何これどういう展開??
なんで3歳児が私を賭けて戦うことになってるの?ちょっと、ニヤけてないからね!嬉しいとか思ってないからね!!嘘です、超にやにやしてます。朝の戦隊モノの番組とかで覚えたようなセリフで睨み合ってるんだもん!!そして間にいる私!幸せで挟まれて圧死してしまいそう…!!
「男2人に取り合われるなんて、天音はやっぱ自慢の妹だわ…」
「ちょっとお兄ちゃんはややこしくなるから入ってこないで」