お姉ちゃんと呼ばれたい
「おねえちゃん」
「天音」
「ねーちゃん」
「天音」
「んー…あねき?」
「天音」
「むぅ」
推しがなぜか私のことをお姉ちゃんと呼んでくれません。
なぜだ、確かに真一郎のこともずっと名前で呼んでた描写があったけど、こういうものなのでしょうか。全国の弟妹を持つ皆さま教えてください。そりゃあ推しに名前で呼ばれるだけでもなんて言う贅沢?!って感じですけども、なんかこう、お姉ちゃんで呼ばれるの、めっちゃ良くない?良くない??そう思って教えこんでたのに、もういつの間にか名前呼びになっていた。まあ真一郎もおじいちゃんも名前で呼ぶから、そうなっちゃったのかなぁ。
「天音」
「はぁい」
「…オレ、弟やだ」
「え゛っ…」
「だから、天音」
オレ弟やだ…?弟やだ……え……なぜ……?え?待ってどういうこと…?あれ〜、推しってもう私が血の繋がりないって知ってたっけ?いや絶対知らない、分からないはずだもん。じゃあもしかして血の繋がりとか関係なくお前が姉ちゃんとか嫌ってこと?なんでだ、え、私なんかしたっけ??可愛がりすぎた?気持ち悪かったかな?いや、めっちゃ思い当たるところあるわ、どうしよう。闇堕ちから救う!とか意気込んどいて嫌われたんですけど、どうしよう。
うわ、そう思うと視界が歪んで来たではないか。だって、だってだって、前世の記憶があるから邪な気持ちが多少あったとは言え、愛情いっぱいに接して来たつもりだったのに、急にそんな、え、いつから嫌いだったんだろう。推しの嫌がることするとかわたし馬鹿なの?
「な、なんで泣くの?」
「……(お前のせいだわ)」
「ぎゅってしたら、泣きやむ?」
「え?」
ぎゅっと頭を小さな腕で抱きしめられる。
いや、あなたに泣かされたんですけど。てか2歳児に泣かされる私も私だけど。なんで元凶に慰められてるの?どういうことなの?嫌いなんじゃないの?もしかして泣かしたら真一郎に怒られるから泣きやめってこと??色んなことぐるぐる考えすぎてまた涙が浮かんで来る。子供の涙腺もなかなかにゆるゆるだねぇ!
「…泣いちゃヤダ」
「だっ、だって…私のこときらい、なんじゃ」
「ちげー」
「弟ヤダって、言ったもん…っ」
「けっこん!」
「……は?」
「オレは天音とけっこんする!でも、弟だとできないってテレビがいってた」
「はわあッ…?!」
びびびびっくりしすぎて変な声でた?!
結婚?!結婚て!!なに!え!そう言うこと?!あれでしょ、ちっちゃい子がよくママと結婚するーって言うやつでしょ!だよね?え?その対象が私ってこと?まじか、推しにプロポーズされたんだけど!えっどうしよう…えっめっっっっっちゃ可愛いんですけど!!!
涙なんが吹き飛んで、今度は私がぎゅっと推しを抱き締め返した。ふへへ何この生き物かわいすぎる。
「どうしよう、かわいい…」
「オレはかっこいい!だろ」
「うんうん、カッコいいね」
「だから、けっこんしろ!」
「そうだね、結婚しようね〜(はあ天使、私の弟まじ天使)」
「やくそくだからな!」
「んな…!」
ちゅ、?ちゅって…?!
今ほっぺにちゅって〜?!!?
頬っぺた押さえながら、ぱちぱち瞬きしてたら、推しは渾身のドヤ顔をかましていた。ハァっ…何これっ、私にトドメ刺しに来てるの……?!胸が苦しいんですが…ッ!罪だ…この歳にして罪な男だ……。
「天音も、なまえ」
「えっ…?」
「よんで、オレのなまえ」
「えー…あー、と」
「なんでよばないの」
そう、私は推しの前で推しの名前を呼んだことがなかった。
なぜなら私にとって彼は"無敵のマイキー"であり、佐野万次郎じゃないからだ。飽くまでも推し…名前で呼んだらそれを忘れちゃいそうだから呼べなかった。でも、気付いてるのは意外だったなぁ…。ちょっとその目で私を見つめるのはやめてください。動悸息切れが。仕方ない、呼ぶしかない。決心しなさい私。
「…はやく」
「ま、んじろう」
「っへへ」
そのはにかみは反則ですね。