「あッ!」
はらりとポケットから落ちた地図を追いかけ、太一は走ってきた道を戻ろうとしていた。ただの地図なら、よかった。だけど、あれは栞が褒めてくれたものだ。分かりやすいと言ってくれたものだった。
そんな太一の目と鼻の先に、レオモンが迫っていた。
「ベビーフレイム!」
疲れた状態のベビーフレイムほど弱い炎はないが、それでも時間を稼ぐにはもってこいだ。地図も一緒に燃やしてしまったことアグモンは謝り、太一はしょうがないと笑った。
「ギャハハハ!いらっしゃーい!」
オーガモンの緑色の体を見つけたイヴモンは、瞬時に小さな体を持って栞の前に立ちはだかった。微力な自分が、護らなければならない相手――それが、彼女だからだ。
「待ってたぜ、覚悟しな!」
武器である棍棒を片手に、いやらしい笑みを浮かべる敵に、人知れず子供たちも焦った。行く手を、両方塞がれてしまったのだ。
「あれも本当はいいデジモンなの?」
「正真正銘の悪いやつだよ!」
「選バレシ子供タチ…倒ス!」
前にはオーガモン、後ろには黒い歯車によって正気を失っているレオモン。
「しまった!はさまれた!」
「最初から僕たちをここに追い込む作戦だったんですよ!」
「そんな…レオモンとオーガモンは敵同士なのに!」
「けけっ、やっと手に入れられるぜ、守人!」
「なんだと!?」
オーガモンの瞳は、はっきりと栞に向けられていた。言葉の意味を直ぐさま理解した空が、彼女の手を引き自分の後ろに隠す。栞は、すぐに我に返り、震える手を隠そうと握りしめた。空は、そんな彼女の手を強く握りしめる。
(栞は、僕が守る。絶対に、失わせたり、しない)
進化は出来ない、それがルールだから。約束であるから。けれど彼に変わって、自分が守らなければいけない。約束したから。
無力だけど、微力だけど。――それが、産み落とされた本当の意味なら。
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