「地図なんて書いたって無駄だよ!もうどうしようもないんだ…」
「どうしてこんなことになっちゃったのかしら…」
―――…ナニカガクル。キヲツケテ、シオリ。
「え…?」
ふわ、っと一つの言葉が栞の頭の中に舞いこんできた。少しばかり低い、少年のような声。その声とほぼ同時、ドーンという耳を劈く音が聞こえてきた。
「なっ、何だ!?」
「とりあえず降りてみましょう!」
光子郎の言葉を受け、子供たちは来た道を下っていく。
そして見えたものは、割れている道だった。
「通れなくなってる!」
「どうするんだ、これじゃ…」
「待って、何かいる…」
す、とイヴモン同様に目を細める栞の気迫に押され、子供たちは黙り込んだ。
「レオモン…あれ、レオモンだよ!」
「レオモンって?」
「レオモンは良いデジモン!」
「とっても強い正義のデジモン!」
だから余計に、栞の空気が可笑しいとデジモンたちは感じ取った。良いデジモンだったら、守人が反応するはずが、ない。
「子供タチ…」
「レオモン…?」
「違う――黒い歯車だ…!逃げて!」
「倒ス!」
「レオモン―」
慈悲深く染められた灰色の瞳。以前、どこかで見たような。
―駆けだしてきたレオモンのスピードが、一瞬だけ落ちた。
「今のうちだ!」
「栞――何してるのよ!」
どちらかといえば、空の声に反応したのは、イヴモンの方だった。栞、と彼女の服を小さな体で引っぱって、何とか走らせようとする。
意識はある。しかし、ぽっかりと胸に空白が出来ている。この感覚をどう呼べばいいのだろう。――わたしは、だれなんだ。
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