「もうこれ以上は無理よ」
「どこかゆっくり休める場所を探した方がいいな」


 くるり、と太一が森を見渡す。しかし、そこに広がるのは木々ばかりだった。


「ん?…あ、あーっ!あれ!」


 そんな時、丈が声をあげた。真っ直ぐ伸ばされた指は、迷うことなくある一点を指している。
 森を抜けたその先に、大きな建物の姿が見えた。


「あそこに行きましょう!…栞さん、あと少し歩けますか?」
「う、ん…」
「ほら、掴まれよ」


 手を差し伸べてくれたのは、心配そうに眉を寄せたヤマトだった。揺れる視界を抑えながら、栞はそっとその手を掴む。あまりに弱々しく掴んでくるので、ヤマトは己から強く栞の手を持った。


「ごめ、ん、なさい…」
「こういう時は、ごめんじゃないだろ」
「そうよ、栞さん。私たち仲間じゃない!」
「――…うん、あ…りがとう」
「栞さん、くるしい?」
「大丈夫…だよ、」


 反対側はミミが支えてくれ、二人の暖かい笑顔に栞の胸も熱くなった。ヤマトの隣をちょこちょこ歩くタケルも少しだけ泣きそうな顔をしながら、栞の歩調に合わせて歩く。
 どうしてみんなこんなにも優しいのだろう――少しだけ涙がこぼれ落ちたのは、苦しいせいにしておこう。先に様子を見るといった丈たちの後を追うように、栞たちもゆっくり歩き出した。


「今度こそニンゲンが住んでいるに違いない!」
「待て、いきなり入ったら危険だぞ!…ん?」


 太一が洋館をじろじろと眺めている間に、栞たちもようやく到着した。そして彼女の頭の中にも、太一と同じような疑問が浮かび上がった。

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