「こんな建物、上から見た時にあったかなあ…」
「地図に書いてないの?」
「お前が燃やしちゃったんだろ!」
「あ、そっか」
ムゲンマウンテンの頂上で見渡した時、このようなしっかりとした洋館を栞も見なかった。見落としていたのだろうか――そう思って洋館を目にいれた時、栞の背中にまた悪寒が走った。先ほどと同じように、悪意のこもった視線も感じる。
1人、また1人と洋館に入っていく中、栞は最後まで頑なに拒んだ。入りたくない、理由は知れないが、入りたくない。しかし彼らが栞のために探してくれた建物だ、勝手なわがままを言うことはできなかった。結局空に呼ばれてすぐに入るはめになった。
「ごめんくださーい」
「誰かいませんかー?」
「どんな様子だ?」
至って立派な建物で、問いかけた方が恐縮してしまいそうだ。
「特におかしいところはないようだぜ」
「それだけにかえって不気味ですよ…」
「えっ?まさか君たち、引き替えそうっていうんじゃないだろうね?こんな立派な建物があるっていうのに、」
「ま、それもそうだが…」
胸のあたりが、ざわざわとしている。どこからか、ここは危険だと忠告する声が聞こえる。たぶん、自分が嫌だとか思っているからだろう。――なるべく栞は顔をあげず、俯いたままにしていた。
「あー!綺麗な絵!」
「…ん?」
タケルの無邪気な声に、丈は後ろを振り返る。
壁にかけられた、天使の絵。光を帯びる太陽に祈るように、手を組んでいた。
「ホント、綺麗!」
「…天使の絵?――つーか、どこかで見たことあるよう、な」
黄金に光る中で、淋しげな横顔が印象的な絵。瞬時、太一は後ろを振り返った。当人は俯いたままだったが、なんとなくその横顔が、いつか見た栞にそっくりだと思った。
(…まあ、単なる思い違いってやつだよな)
こんなところに栞の絵が飾ってあるわけがない。天使の絵、と自分で言っておきながら、栞を見るなんて。 まるで、自分が栞のことを天使と言っているようなものだ。
「こんな綺麗な天使の絵が飾ってあるようなところに悪いデジモンがいるはずないじゃないか!」
「確かに今更野宿っていうのも…厳しいわね」
ちらりと栞を視界に入れ空が言うと、最後まで疑っていた光子郎もヤマトもため息をついた。
「仕方ないですね…」
「おい、みんな行くぞ!」
ヤマトの声に子供たちデジモンたちが洋館に一歩踏み入れると、割と自然にバタンという音を立て、扉がしまった。
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