「?ねえ、具合でも悪いの?」
「え、わ…私…ですか?」
「ええ、そう。だってさっきからずっと下向いているじゃない、」


 覗き込むように女の子が栞の顔を覗き込んできた――心臓がバクバク鳴っている。どうしよう、うまく、返事なんかできないよ。戸惑いながら、首を横にふると、女の子もそう、と可愛らしく活発に笑った。


「ねえ、名前なんていうの?あたしは太刀川ミミよ、あなたは?」
「え、えっと…私は、真田、」

「太一!危ないでしょ、急に走り出さないで!」
「なんだよ、うるさいな。走らんなきゃ吹雪にやられてるだろー?」
「全くもう!」


 再び新たな声が聞こえた。
 栞をはじめ、そこに集まったこどもたち全員が祠の扉へと顔を向ける。聞き覚えのあるこの声は、と栞の顔に安堵の表情がうかぶ。
 バンと扉が開いて、雪を頭に被せていた空と、同じクラスの八神太一がいた。


「お?なんだなんだ、みんなここにいんのか」


 ゴーグルがトレードマークの元気少年、そんな代名詞が彼にはよく似合う。太一は空の後ろからひょっこりと顔を出した。祠の中を一回ぐるっと見渡してから、中に入ってくる。それだけだったのにとても胸がバクバクしている。恐怖心ゆえだ。知らない人は怖い、何を考えているか分からないし、第一栞のことを何と思っているかも分からない。
 独りは嫌い。でも、二人以上は苦手だった。失った時の苦しみを味わうくらいなら、はじめから一緒にいないほうがいいんだ。それでも、一人は怖いなんて、矛盾してる。


「あら、栞!ここにいたのね。……どうしたの?具合、悪い?」
「…、えっと」
「え?」
「だいじょうぶ、だよ」
「具合悪くなったら、いつでも言ってね」


 暖かな手が、栞の手を包み込んできた。ぎゅ、と握り返す。心もほんわりと温かくなっていくのが分かる。

 このとき、子供達の誰一人として、ここに集まった八人でこれから長い、長い冒険をしてくことになろうとは、想像もしなかった。


17/07/22 訂正
10/05/30 訂正
08/01/11 - 08/01/14


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