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エレキモンと小さな友情を交わしたタケルとパタモンは、未だ誰とも会えずにいた。
「ところで君はあの山に帰る方法を知らない?」
「あの山って?」
タケルの言葉に、エレキモンは後ろを仰いだ。そこにそびえ立つのは、ムゲンマウンテンしかない。彼はぶるっと震えて、首を勢いよく横に振った。
「ムゲンマウンテンじゃないか!それだけはやめたほうがいい…あそこにはデビモンが…」
「知ってる…」
そのデビモンに、昨夜襲われて、みんなと離ればなれにされてしまったのだ。だから、デビモンに聞かなければならないことがある。
「お兄ちゃん達をどこにやったのか…聞かないと」
「聞いても素直に応えてくれるような相手じゃないぜ!何たって凶悪デジモンだから…。どうしても聞きたいのなら、戦って倒すしかないな」
「戦うのだけはいや!」
「いやって言っても…」
そう、タケルはもう知っている。傷ついて、傷つけて―――それでは何も解決しないのだ。エレキモンが困ったように頬を掻くと、パタモンは優しく笑った。
「何か方法があるはずだよ!戦わなくてもいい方法が、」
「そんな方法があったら!」
「ねえ、さっきの気持ちを思いだしてよ」
言い返そうとするエレキモンの言葉を遮ったのは、タケルの優しい声だった。顔を見れば、彼は声と同じように優しい顔をしていた。
「みんなで一緒に笑ったよね?何かが起きる気がするんだ!僕たちの心が1つになった時、何かが…起きる…」
その言葉を受けて、エレキモンははっとした。その姿が、彼女にとても似ていたからだ。そう、彼女もいつも言っていた。争いをして掴む平和は、あまり好きではない。誰もが傷つかず、お互いが調和できる日は必ずくる。その日のために、自分はあるのだ、と。
「守人…」
「え?」
「おんなじようなことを、守人も言ってた…。どんなときだって笑って、そうあのデビモンにすら笑顔で接してた…」
忘れかけていた大切な人のことを、この少年は思い出させてくれた。エレキモンはにっと笑って、かけだした。パタモンは目を瞬かせ、その駆ける背に問いかける。
「どこいくの?」
「ちょっくらギアサバンナまで!ピョコモンたちの村があったろう?あいつらにも今の話をして、みんなの心が1つになった時、バラバラになった島が元に戻るかもってな!」
「島が元通りに…」
「予感だけど俺はそう信じたい!じゃあな!」
「気をつけてね!」
バイバイ、と手を振るパタモンの横で、タケルはきっと真剣な表情をした。幼いながら、己の役目に気づいたのかもしれない。
「…お兄ちゃん…」
空に浮かぶヤマトの顔に、タケルは大きく頷いた。きっと、やれって、言ってる。お兄ちゃんの弟だから、やらなきゃいけないんだ。けれど、勇気がなかなか出ない。
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