「…守人、 ツカマエル」


 思った通り、罠に掛かってくれたレオモンを前にして、太一は自分のデジヴァイスをレオモンに向けた。デジヴァイスから漏れる光を感じ、栞はただ祈った。

 …どうかレオモンの中から闇が消え、彼がもとに戻ってくれますように。

―――…しゃららん。 しゃららららん。

 それはあらゆるデータを越えて、再び栞のもとへ光として舞い降りた。まるで、栞のいる場所だけ、スポットライトが当たっているみたいに、光は射し込んだ。


「ぐお、おおおおッ!」


 レオモンは光に耐えきれず、咆哮した。先ほどの光も残っているらしく、現在と過去がプラスされて、それは数え切れないほど膨大なものとなった。


「ぐお、おおッ!」
「そうか、そういうことか!」


 吠えるたびに、背中から歯車が出て行く。それを見て、ヤマトもデジヴァイスを取りだした。二人のデジヴァイスに注がれる、栞の優しく暖かい清浄なる光。その灯火は、やがて、レオモンの内なる闇を滅びへと導く。


「ぐおおおッ!私ハ… 私は…!」


 それが、最期の叫びだった。


「ま、まずい!ガキ共が…!」


 焦ったオーガモンだったが、四方八方を成長期デジモンに囲まれ、次いでカブテリモンのメガプラスターが直撃し、それどころではなくなってしまった。


―――……ここ、は。あれ、は。 あの人は。


 レオモンは、歯車を身に受けて以来ずっと葛藤していた。闇に打ち勝つほどの力を持てず、願ってもいないはずの力で、目の前の子供たちを傷つける。己の正義はそれを許すことができず、しかしそれを拒むには無力すぎていた。 

 あの人の声も、心も、姿も、顔すら忘れていく中で、それは、光だった。いつでも己を優しく抱きしめる温かい声でもあった。ああ、 あなたは。邪心が墜ちていくのを感じ、レオモンは暖かい光を、ただ身に受けていた。すべてを浄化する力は、紛れもない、守人の光だけだった。

 パリン、と空に向かって放出された歯車が、音を立てて崩れ落ちた。闇は光に耐えきれず、脆くなり、そして灰となりこぼれ落ちていく。子供達の顔に、笑みが宿った。


「やった…」


 呟くのは太一とヤマトだ。


「聖なる力が勝った!」


 喜んだのは光子郎とミミだった。


「パタモン、もう大丈夫だよ!」


 抱き合うのはパタモンとタケルだった。


「ヨく頑張ったネ、栞」
「…う、うん」


 安心したように微笑み、栞はイヴモンを抱きしめた。いつの間にやらおさまっていた光は、いつまでも栞の心の中に有り続けるだろう。


「…選ばれし、子供たち」


 がくりと膝から落ちたレオモンは、顔を上げて、太一たちを目に止めながら呟く。それからその顔は、栞の方を向いた。


「守人、」


 呼ばれた栞は、ぴくりと肩を揺らして、レオモンを見た。
 闇でいる時間が長すぎたのか、憔悴しきった顔を見て、栞は駆け寄り、その肩に触れた。


「ああ、暖かい…」


 ぽう、と栞の指先が仄かに光った。目に見えるほどの暖かいオーラは、レオモンの全身を包み込む。────それが、約束であったかのように。


「レオモン、だい、じょうぶ?」
「…ああ、あなたの光に触れたから、もう平気だ」
「私の『光』?」
「守人、そして選ばれし子供たち───私を闇から救ってくれて、ありがとう」


 細められた目は、強き者の証であるたくましさを秘めていた。


17/07/25 訂正
10/11/09 訂正

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