(ああ、そうか)


 手に入らないと知っていたからこそ、手に入れたいと思っていた。
 ずっと、自分のためだけに、笑顔を向けてもらいたかった。
 彼女のただ、もう一度、会いたかった。あの笑顔を向けてくれた彼女に。
 いつでも優しかった彼女に。

 それを邪魔するものは、誰であろうが、赦しはしない。


「ク、クククク…ハハハハハハ!」


 突然高く笑い始めたデビモンに、子供たちは体制を整え、いつでもデジモンが進化できるようにとデジヴァイスを強く握った。


「……邪魔だ」


 腕を振り、闇を放つ。それは何の攻撃でもなければ、彼の必殺技でもない。ただ、あまりにも強大すぎる闇のために、たった一欠片でも放てば、それは大きな衝撃波に変わる。


「うわぁああっ!」


 レオモンが子供たちの盾になろうと前に出るが、それでも強力すぎる波は、レオモンを通り過ぎ子供たちを軽く押した。どかりと鈍い音が聞こえ、みんなが壁にぶつかった。
 気をよくしたデビモンは更に闇を放った。黒い閃光は、瞬く間に子供たちに覆い被さる。それは闇だ。誰でも心の奥底に仕舞いこんである闇を引き出す、大きなもの。


「やめろ、デビモン!」


 レオモンは吠える。しかし、デビモンは楽しげに笑うだけだった。


「守人は…あの御方は!そんなことを望んでなんかいない!」
「だまれ!」


 更に強い衝撃波がレオモンに炸裂する。耐えきれず膝から崩れ落ちるレオモンを、子供たちはただ見ているだけしかできなかった。レオモン、と大きな声で名前を呼んでも、レオモンから返事はない。まるでマジックミラーが存在するかのように、外との世界と遮断されている。


「ふん、愚かな。おまえたちはすべてここで滅びる運命だ」


 一瞬、それは絶望だった。この闇が消えない限り、自分たちは外に出ることはできない。すなわちそれは、デビモンの言う通り、死を意味することになる。


「どうしようも、ないの…?」
「諦めるな!道は必ずあるはずだ!」
「でもどうやって…!」
「…光、だ」
「なんだって?」
「みんなの光を、空へ放てば」


 言うや否や、栞はデジヴァイスを握りしめ、祈った。己の中の光を、すべてデジヴァイスに捧げる。それを見て、次から次へと子供たちは同じようにデジヴァイスへ光を捧げた。
 それは初めは小さな点だった。いくつもの点が重なりあい、それは一つの太陽になった。デジヴァイスから次第に光が放たれ、それは彼らを覆う闇を打ち破った。


「なに…」
「ハープーンバルカン!」
「なんだ!?」


 大きな光に目を奪われていたデビモンの死角から、大きなミサイルが何発も打ち込まれる。ありとあらゆる部分に突き刺さる痛みに、デビモンは堪らず声をあげた。


「やったぞ、イッカクモン!」

「選ばれし、子供…!」

「メテオウイング!」


 ふらりと倒れかけるデビモンめがけ、炎のかたまりが遙か彼方から降り注ぐ。


「グオッ!」


 熱い炎は、デビモンの全身を覆った闇を剥がすかのように、勢いよく燃え盛った。


「空…丈さん…!」


 2つの希望が、再びムゲンマウンテンへと舞い降りた。

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