「背中が弱点とでも思ったのか!?そうはいかねえ!」
ただ一人、オーガモンだけが状況を楽しんでいるようで、高笑いに似た声をケタケタとあげた。太一は正義感にかられて強く拳を握りしめた。
「ッ卑怯だぞ!」
「なんとでもいいやがれ!俺はデビモン様と一つになったのよ!もうテメエなんかに負ける気はしねえぜ!…覇王拳!」
「ああ、レオモン!!」
「ギャハハハハ!」
倒れているレオモンの身体に、覇王拳がトドメを刺した。デビモンと同化したことにより増した力のせいか、レオモンの身体は森の奥まで飛ばされてしまった。遣る瀬無い気持ちで、栞の瞳から、たくさんの涙がこぼれた。
(…なぜ、守人は泣く)
レオモンとオーガモンの戦いなど、まるで目に入っていないようで、目の前を飛ぶ鬱陶しいバードラモンの身体を勢いよく掴んだ。
(何故、こんなにも…)
―――…ねえ、あなたは独りで何をしているの?
「バードラモン!!」
空の悲痛な声を聞いて、バードラモンは息を吹き返し、その手から逃れようと必死に暴れた。しかしデビモンの彼女を掴む手は緩むことはなく、更にデビモンを苛立たせる原因となった。
「ジタバタするな!」
思い切り掴んだあとに、地面で傷つき横たわっているグレイモンに、その身体を力任せに叩きつけた。二匹の身体はぶつかりあい、崖下へと落ちていく。
残ったイッカクモンとカブテリモンも、彼の大きな力の前にはあっけなく崩れ落ちてしまった。
―――…こっちへ来て、一緒に遊びましょう。
ずきりと頭が痛む思いで、デビモンは栞の方を向いた。
「そ、そんな…みんな全然歯が立たないなんて…!」
一人、一人と倒れていく中、残ったのは戦う力を持たない栞とタケルの二人のみだった。栞の視線は地面へと向けられ、ただひたすらに涙をこぼしていた。そんな中、タケルは泣きそうなほどに瞳を潤ませ、パタモンを抱きしめた。
デビモンの瞳が、ようやくタケルを捉えた。
「最も小さき選ばれし子供よ…。オマエさえいなくなれば…もう恐れる者はおらず、守人を我が手中に収めることができるのだ!!」
「ぼ、ぼく…っ」
「死ぬがいい―――デスクロウ!」
「逃げろ、タケル!!」
(タケル、逃げろ。……タケル?)
何かが欠落していく世界の中で、その声だけでやけに栞の中で響き渡る。
タケル、タケル。
タケル、くん。
―――…栞ちゃん、また来てくれたの?
―――…うん!だって、―――くんに会いたくて。
―――…―――も、栞ちゃんが来るとすごく嬉しそうなのよ。
―――…ほんとう?
「タケル!」
―――…いいな、―――くん。毎日タケルくんと一緒だから。
―――……じゃあ半分こするか?
―――半分こ?
―――…ああ。おれはタケルの兄ちゃんだけど、タケルの兄ちゃんの半分やるよ。だからタケルのお兄ちゃんはふたり。
―――…あら―――ったら、もうプロポーズ?
―――…それになあ、栞ちゃんは女の子だから、お姉ちゃんだぞ。
―――…でもいいわね。栞ちゃん、タケルのこと、守ってあげてね。
―――…うん!
―――…いい返事だな。―――にも分けてやってくれ。
―――…私、守るね。タケルくんのこと、守る。お兄ちゃんが私にしてくれるように。
―――…お、おれも!おれもタケルのこと絶対守る!…おまえのことも、おれが守る…。
―――……うん!
「この、くたばり損ないどもがっ!」
―――…ならその子をたくさん可愛がってやればいい。守ってやんな。
「…うん、お兄ちゃん」
ぐ、と涙を拭いて立ち上がった。
彼女の瞳は絶望にぬれてはいたが、それでも、逞しく力強い心も持っていた。
17/07/25 訂正
10/11/09 - 10/11/23 訂正
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