「タケル、くん…!」
ずきりと痛む頭を押さえ、栞は立ち上がろうと壁に手をつく。ふわりと浮いた感覚だけが残り、己の力で歩くことがままならなかった。がくんと折れた膝に鞭を打とうとしても、笑うだけだった。
(…栞は…みんなは…タケルを守ろうと必死に戦って、ぼろぼろになって、それでも戦おうとしているのに)
みんながタケルを守ろうと、傷ついた身体で、必死に立ち向かっているというのに。
(僕は、何をしているんだろう。僕が守らなきゃいけないのに。…僕が…!)
パタモンは小さな羽根で羽ばたくと宙に舞い、勢いよく羽根を動かして、エアショットを放った。しかしそれはデビモンの大きな手によってかき消される。
「エアショット!エアショット!」
それでも諦めず放つも、デビモンは諸共しなかった。
「ダメだ…、こんなんじゃ効くはずないよ…」
大きな手がタケルを襲いかかろうとしている。守りたいのに。どうして自分だけできないのだ。
「どうして、僕だけ…」
大きな瞳から、大きな涙がこぼれ落ちる。悔しくて、悔しくて。いつも自分だけ、お荷物になっていた。他のデジモンたちはパートナーを守る力を得たというのに、どうして自分だけ。ほかのデジモンたちがうらやましかった。渇望にも似た思いで、いつも見つめていた。
「どうして、進化できないんだよ!!」
―――…しゃらん。
悲痛な願いが、溢れ出す。進化したい。進化して、強くなって、タケルを守りたい。
デビモンの手がタケルに届くあと一歩のところで、パタモンはその手の中に飛び込んだ。そうすることで、タケルを守りたかった。
「パタモン…、」
―――…しゃらららん。
薄々知っていた、その願い。
今なら解き放つことができる。
「進化できるよ…。パタモンのその思いがあれば、ぜったいに…」
そうして、栞は祈りを捧げた。彼女の身体は、光によって覆われた。今まで見たことがない大きな光。その光はやがて、デジヴァイスという媒介を経て、タケルのデジヴァイスへと送られる。そしてその光は、パタモンのデータへと送り込まれた。
―――…しゃらららん!
カッ、と眩い光が、デビモンの手の中から溢れ出した。
「何!?」
その光は徐々に強さを増し、強大な闇には耐えきれないほど大きなものへと変わった。
「くッ…!?」
闇を受けすぎたものにとっては、持っていられないほどの光。
栞の身体も、パタモンの身体を同じくらいの光を発していた。
「タケル!!」
ヤマトが叫んだ。タケルはどうなっているのか確かめたくても、光に遮られてそれを確認することができない。
「あれは…」
「進化の、光…!」
「…あなたの願い、叶えたよ。…“エンジェモン”」
止み終えた光の中から、一人の天使が、現れた。
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