パタモンは、自分の中の光を感じた。
そしてそれは、タケルのものであり、栞のものであると感じた。
「パタモン進化!―――…エンジェモン!!」
強い力がこみ上げてくる。
これが、進化の証かと思った。それと同時に分かってしまった。己がしなければならないことを、それをすることにより、 己の命が 消えゆくことも。
「パタモンが、進化した…」
凜とした姿は、神々しい光を放つ。
天使は、悪魔と向き合っていた。
「エンジェ、モン…」
その光は、見ようによっては青色にも見えた。透明にも、白にも見えた。六枚の羽根が、その光を、より一層引き立てている。その天使の姿は、美しかった。
「タケルの、デジモンなのか…?」
逞しい身体からは、溢れるばかりの力が窺える。
ここにいるどのデジモンたちよりも、彼は強いのが一瞬にして分かった。彼が放つ神々しい光が、それを語っている。
「パタモンが、進化した…!」
「まるで天使ね…」
タケルが呟き、その後をミミが追う。そう、誰もが目を奪われる、美しい天使。ただ一人、デビモンだけが忌々しげに顔を歪めた。
「おのれ…もう少しだったのに…」
「オマエの暗黒の力…消し去ってくれる!」
持っていた錫杖を高らかに天へと掲げ、更に神々しい光を放った。
「我が下に集まれ!!聖なる力よ!!」
それはかつて栞がしたように、デジヴァイスを通じて、エンジェモンのもとへと集まった。8つの光が、エンジェモン目掛け駆けだしていく。恐れを知らぬ、子供たちのように。
「ぬ…!?何をする気だ!?」
光に闇が強いのと同じように、また光は闇に強い。彼が持つ闇の力を越える光があれば、この世界は救えるはずだ。
「栞、願って。君の願いは、データを越え、私の下へと舞い降りる」
凜としたエンジェモンの呟きを聞き逃すことなく、栞はあわてて必死に祈った。何も無茶な願いを祈るわけではない。ただすべてが平和で終わるようにと祈るだけだ。
集められた光は、デジモンの中の進化という光だった。彼らは光をエンジェモンの下へと集めたことにより、その進化の工程を止めて、元の姿に戻った。
「やめろ!そんなことをすればオマエもただではすまないぞ!!」
「だが、こうするしかないのだ…。たとえ我が身がどうなろうとも!」
「エンジェモン!!」
タケルは必死に叫び続ける。
この声が、エンジェモンに届くようにと。
「…エンジェモンは自分を犠牲にするつもりだ」
「え…?」
「それだけの覚悟が彼を進化へと導いたんだ。これは…彼にしかできない」
「私たちには、何が…」
「光を彼に与え、そして彼を導いてあげることだ。栞、君が出来るのは、そうして彼を守ることだ」
穏やかなイヴモンの瞳は、少し、切なそうにエンジェモンを見ていた。
誰もが願う闇の消滅。しかし、その過程を得るために、尊いものを犠牲にしなくてはいけなかった。まだ小学5年生の彼女にとって、身近な犠牲は大きなものだった。
「デビモン…オマエの暗黒の力は大きくなりすぎた…」
折角で会えたタケルと、誰が望んで離れたいと願うだろうか。けれど自分は進化する力を手に入れた。そして同時に、自分の使命を知った。だから無くしたくなかった。タケルとともに過ごしたこのファイル島を、守らなければいけなかった。
彼は、ふと気配に気づいた。守人だ。 彼女は優しく、聡明である。 守って。 心の中で呟いた。私の変わりに、どうかタケルを。 彼女がふと顔をあげ、エンジェモンと視線を混ぜあった。悲しげにゆがめられた頬に、エンジェモンは少しだけ、口角をあげた。
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