彼女たちは、その時を確かに見ていた。その瞳に、焼きついていくのは、変わっていくデジモンたちの姿。あるものは翼が生え、あるものはたくましい体を得、あるものは手足がのび、あるものは体の色すら変わる。
それが始まりの日。
それが、これから始まる永い冒険の、『最初の記憶』だった。
「コロモン進化、アグモン!ベビーフレイム!」
コロモンから進化した、オレンジ色の小型恐竜の姿をしたデジモンが炎の息を吐いた。
「ツノモン進化、ガブモン!プチファイヤー!」
かつてツノモンであった二本足で立つ狼に似たデジモンは火の玉を噴いた。
「ピョコモン進化、ピヨモン!マジカルファイヤー!」
ピョコモンであったピンク色の鳥デジモンは不思議な火の螺旋。
「モチモン進化、テントモン!プチサンダー!」
モチモンから進化した赤いテントウムシデジモンが雷に似た電気的衝撃。
「タネモン進化、パルモン!ポイズンアイビー!」
タネモンから進化した頭に赤い羽根を乗せた緑のデジモンの手が伸びてツタとなり、敵に巻き付いた。
「トコモン進化、パタモン!エアショット!」
もとはトコモンであった大きな耳を持つハムスターに似たデジモンは、大きく頬をふくらませ、空気のかたまりを吐いた。
「プカモン進化、ゴマモン!」
プカモンであったアザラシそっくりのデジモンは何もしなかった。ここが彼の得意とする地形ではないため、何もできなかったのだ。
「フワモン進化、イヴモン!」
最後に、かつてフワモンであった宙に浮く真っ白のデジモン。彼も何もせず、ただパートナーである栞の隣で戦うデジモンたちを見ていた。
クワガーモンは苦しみ、低い声で鳴く。
「ワァァァァ…」
その声がもの凄く苦痛に聞こえた。さっきとは比べものにならない攻撃力にクワガーモンも面食らったようだ。低く鳴いて林の奥まで倒れた。
太一たちは呆然しつつも喜びを隠せないようだった。
「やった…」
「太一ーっ!」
デジモンたちは抱きついてくる。よかった。栞も徐に自分の隣に浮いていたイヴモンの体をひっぱり、胸の中に閉じ込める。…よかった。安心したせいか、力が抜けてしまったみたいで、ぺたり、とその場に座り込んだ。
その時、空の瞳に、苦渋しているクワガーモンが後ろから襲いかかってくるのが見えた。あぶない、近くにいるのは。
その、近くに、いるのは。
「栞!!!危ないっ!!!」
「え、…?」
言われ後ろを振り返り、目を大きく開けた。叫ぶことすら、できない。ひゅ、と嫌な呼吸音が、栞の喉から漏れた。
クワガーモンのハサミが地面を割る。ピシピシッと音をたて崩れていく。何をする間もなく、子供たちは崖と一緒に落ちていった。
「わぁあああああぁあぁぁぁぁああああああッ!!」
そう。
それが八人の子供たちの、とても長くてとても短い夏休みの始まりだった。
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