「僕も分かりません。しかし普通はある生物の種全体がより高度な種に変化することですけど…」


 自分なりの分析ですが、と付け足した。


「そうですがな!」


 突然、テントウムシに似たデジモンが光子郎の隣で、羽根らしきものをパタパタ動かして、自分を自己主張した。


「その進化!ワイはモチモンからテントモンに…」
「あたしはピョコモンからピヨモンに…」
「オレはツノモンからガブモンに…」
「あたしはタネモンからパルモンに…」
「ボクはコロモンからアグモンに…」
「そシて僕がフワモンかライヴモンに進化シたんダヨ」


 フワモンの時とは変らぬふわふわの毛を、いたずらな風に任せ、イヴモンはにこりと笑った。


「じゃあピヨモンも?」
「そうよ!」


 空が屈んで鳥形デジモン、ピヨモンに問いかけた。ピヨモンは空に話しかけられると凄く嬉しそうな顔をしてぴょんぴょんと飛び跳ねている。対して空は何に対してそんなに喜んでいるのか不思議で仕方がないといった表情をした。


「みんなそうなのかな?」
「そうですがな!」
「ミミのおかげよ!」
「おかげって言われてもねー…」


 パルモンの笑顔に対し、ミミは少し不満そうだった。何かをした、という実感がないのだから、あなたのおかげだと言われても嬉しさのかけらも抱けないといったところか。というよりかは、ただ単に疲れているだけとも思えた。


「もう元には戻らないの?」
「んー…たぶん!」
「なんだかよくわからないなー…」
「オイラたちにもよくわからないんだよ…」


 腕を組んで考え始めた丈の隣でゴマモンの表情が曇る。慌てて丈は「い、いいんだよ」と、手を顔の前で振った。先ほどまでは誰よりもデジモンというものに対しては否定的で、その存在を認めようとしなかった丈が、もうすっかりゴマモンの存在に慣れてしまったようでぎこちない笑顔すら浮かべている。その順応性の高さに驚いたのは、プカモンとフワモンのタッグに驚いて自分の手をとり走り出したのを唯一知っている栞だった。


「それよりこれからどうする?」
「元の場所に戻るべきだろう。大人たちが助けに来るのを待つんだ!」
「戻るって言ってもなー…ずいぶん流されちゃったし…」
「崖上にまで戻るのは簡単じゃなさそうだぜ?大体ここはどこなんだ?どう考えてもキャンプ場の近くじゃないぜ」


 軽く背伸びをしたヤマトは、丈が考えたくもなかったことをいとも簡単に言った。
 植物はまるで亜熱帯みたいである。第一、と栞は空を見上げた。自分たちはオーロラの中に吸い込まれて、ここにいる。元の場所に戻っても、キャンプ場に帰れるという確証があるわけではない。むしろ空から落ちてきたのだから、空へ戻らなければ帰れないのではないだろうか。


「…どうしたんだ、真田?」


 心配そうな顔をした太一が、栞の顔を覗き込んだ。急に黙り込んだ―――というよりかは最初から口は開いていなかったが、クラスメイトとして多少なりとも栞のことを把握している太一は、彼女の性格からして泣いてしまうのではないかと心配したのだろう。具合でも悪いのか?と問われれば、問題のない栞は首をゆるやかに横に振る。大丈夫か?と問われれば、こちらも特に問題がないので栞は首を縦に動かした。


「ならいいや」


 にか、と太陽のようなまぶしい笑顔を、太一は栞に向けた。そう。それはまるで本当に太陽を彷彿させるような、明るいものだ。


「そういえば、真田。さっきの直感みたいなものでなんかわからないのか?」


 今度問いかけてきたのはヤマトだった。全員の視線が栞に集まる。
 直感。それはミミの時のことを言っているのだろうか。栞は縮こまり、小さな声で「わからない」と呟いた。あまりにも小さな声だったので聞き取れなかったのか、ヤマトは一瞬だけ眉を寄せたが、その雰囲気に気付き、そこで話を中断した。わかりにくい彼の優しさだった。

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