「え…?ホントにいいの?」
「うん、大丈夫よ、空。今までずっとそうだったんだから」
「心配しないデ」
「でも…」
口ごもる栞とは真逆に、丈は満面の笑みを浮かべた。
「そうしてもらえると助かるよ。じゃあこの非常食は人間の分と言うことで」
「どうだ?うまいか?アグモン」
「だからそれは人間用!」
丈に言われ、太一は眉をぐっと寄せた。何か文句でも言いたいのだろう。雰囲気でそれを感じ取ったのか、丈は少しだけ喉を詰まらせた。
栞は、正直太一がすごいと思った。実際、思っていてもなかなか行動に出せるものではない。自分たちの食糧だって多くはないのだ。それを誰かにあげるということは自分たちの首を絞めるということにもつながる。ずいぶんと理屈っぽい考え方をしている。そんな自分に嫌気すらさす。
栞は自分が受け取った非常食を手に、小さな勇気を見つけた。
「…栞?」
「食べて、イヴモン」
「栞の、デしょウ。僕ハいいヨ。ガブモンが言ッた通リ、自分で見ルけるカラ」
あせったように首を振るイヴモンに、無理やりにでも押しつける。
「私が、いや、なの。食べて」
「デモ、」
「ね、おねがい」
そう言えば、イヴモンは小さな口を開いて、栞の手から非常食をぱくりと食べた。最初は味わうように、しかしだんだんと美味しさを感じたのか、すぐに取り分をぺろりと食べてしまった。
「真田だってやってんだし、いいだろ」
「ダメ!!」
―――…しゃらん、しゃらん。
「…っ、!」
丈の声と重なって、再び鈴の音が聞こえた。その音色に導かれるように、栞は立ち上がり、海を見つめる。ゴゴゴ…、と海の奥底が唸っていた。
(何か来る…、)
―――…しゃらん、しゃらん。
「どうしたの?栞?」
急に立ち上がった栞を不審に思ったのか、空は彼女を見上げた。
「…来る」
栞の言葉とほぼ同刻、砂浜から水しぶきがあがった。
17/07/25 訂正
10/06/30 - 10/07/01 訂正
08/01/21 - 08/02/05
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