「栞!」
路面電車から顔を出した空は、栞にずっと手招きしていた。彼女が路面電車に近づくと、にっこり笑った。
「ねえ、来てみて!凄いのよ」
栞はきょとん、と首を傾げ、イヴモンと顔を見合わせる。何が凄いのか分からなかったが、とりあえず急ぐことにした。
「わぁ…、」
「ねえ?すごいでしょ?」
やはり見慣れたような電車の中に、栞は思わず感嘆の声を漏らす。まだ一日とて離れていないというのに、とても懐かしいもののような気がした。そして何よりふかふかの長椅子が、疲れ切った体には魅力的だった。
「さ、てと。これからどうするか、だな」
空の隣へと腰を下ろした栞は、太一の声を背後に聞きながら窓の外を見た。タケルがパタモンと追いかけっこしているのが見えて、微笑ましくなる。
「とりあえず分担しようぜ。俺とヤマトと丈と空で薪を拾いにいく。光子郎とタケルで釣りでもなんでもして魚を捕ってくれ。真田とミミちゃんはイヴモン、パルモンと一緒に食べれる山菜を探すってのでどうだ?」
太刀川さんと…。栞は小さく呟いてから、反対側に座っているミミの方へと顔を向けた。愛くるしい顔は深くかぶっているテンガロンハットによって隠されていたが、特に自分と一緒で嫌というわけではなさそうだったのでとりあえず安心する。
「オッケー。じゃあさっそく始めようぜ」
ヤマトの合図で全員が立ち上がる。真っ先に動いた光子郎は外で遊んでいたタケルに声をかけていた。おそらく釣りをするのだろう。次に太一と空が話し合い、薪拾いもその中でグループ分けするようだ。どうもこういうときに積極的に行動ができない栞は、立ちあがったもののどうすることもできずおろおろとしていた。すると立ちあがったミミが栞の前までやってきて、可愛らしく微笑んだ。
「じゃあ行きましょう、栞さんっ」
「え…、あ、」
ぎゅ、と手を掴まれた。自分のとは違って暖かい手に、冷え切った体も溶けていく。いつしかミミの笑顔につられ、栞も小さな笑みを浮かべていた。
「…栞さん、笑ってたらかわいーのに。もったいないわよ」
「え?」
「いっつも泣きそうな顔してるんだもの!絶対笑った方がかわいいわ!」
パルモンが木の下を覗き込み、これは食べられるわ、と言っているのを聞きながらミミが力説するかの如く言った。当然ながら栞は話についていけず、きょとんと首をかしげた。急に何を言い出すのだろうか。
「ミミ!これ食べられ、」
「ところで栞さんは好きな人とかいないの!?」
パルモンがミミにキノコを差し出したその時、ミミは目を輝かせながら手をがしっとつかんだ。またもやついていけない話だったがその意味はわかるので、栞は顔を赤らめる。ぶんぶんと首を横に振るも、ミミはその反応に余計に興味を示した。
「その反応怪しいわ!いるんでしょ?このメンバーの中?それともほかの人?」
「ち、ちがうよ…!」
「ミミ、その辺ニしてあげテ」
これ以上ないというくらい顔を赤く染め上げた栞を哀れに思ったのか、イヴモンはストップをかけた。えーと口をとがらせたミミだったが、「山菜取らなきゃ怒られちゃうよ、」という栞の言葉に、山菜探しを再開させた。そのあとは二人で一緒の場所を探すよりも別れた方が効率がいいことに気付き、栞とイヴモン、ミミとパルモンといった風に二対二に別れた。
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