「これ、食べられる?」
「ソレは食ベれナイナ。…ア、うン。こレナら平気」


 イヴモンは体全体で一つのゼンマイを指した。おいしいよ、と付け足された言葉に、栞は何本か生えている山菜を採った。それから、小さな笑みを浮かべた。


「…どウ、シたノ?」
「…あ、ううん。大したことじゃ、ないの」
「栞が楽シかったコト、思い出したンでショ?僕、聞キたいナ」


 優しい笑みを浮かべるイヴモンに、栞はぶちりぶちりと山菜を引っこ抜きながら、口を開いた。


「…昔ね。まだお父さんが、生きてたころ。お父さんとお兄ちゃんと私、おばさんとおじさんと一馬で、ピクニック行ったの。その時のこと、思い出した」


 そう言って栞は少しだけ悲しそうに顔をゆがませた。


「あのときは、たのしかったなぁ」


 お母さんはいなかったけど、みんながいた。二人以上が、大好きだった。


「…そッカ。ジャあ今日ハ、ソの日に負ケないクらイ楽しイものニしようネ」


 俯きかけた栞の瞳に、イヴモンの顔が映し出される。のぞきこまれ、彼女はやがて上を向いた。


「…うん、」


 やがて、そう頷いたのだった。


「…栞、あのネ。僕、こレ以上進化でキないんダ。けどネ、君ハ守るヨ。僕ガ、守るカラ」


 暖かい言葉、そして油断していれば告白にも似たセリフに、栞は小さく笑った。


「真田、」


 名を呼ばれ、栞は振り返る。そこには悪戯な風に金色の髪を遊ばせているヤマトがいた。少しだけくしゃくしゃになった髪を一回撫でつけ、彼は薪を両腕で抱えなおした。


「そろそろメシにするらしいから戻ろう」
「あ、う、うん…。―行こう、イヴモン」
「ソウだネ。もーお腹ぺこぺコー」


 途中、何度かヤマトが薪を落としそうになったのでそれを手伝いながら、湖畔にたどり着いたときはすでに全員が集まっていた。


「おっ、来たな!じゃあ夕食の支度にとりかかろうぜ!」


 薪を集めて一カ所にまとめていた太一が、栞とヤマトに気付いて笑った。けれど空はきょとんとしてから、ヤマトが自分で採ってきた薪を付け足しているのを見ながら、首を傾げる。


「どうやって火を起こすのよ」
「まかせといて!」


 出番だ、と言わんばかりにアグモンは、口からベビーフレイムを出した。見る見るうちに薪に炎がまかれて、良い感じに燃え上がった。


「役に立つじゃんか、アグモン!」


 太一がぱし、とアグモンの背中を叩けばアグモンはまた照れたように笑った。前方からお手製の釣り竿を持った光子郎とタケルが両手に串刺しになった魚を薪の前に移動したので、栞とミミもたくさんの山菜を抱えて薪の前に移動する。


「よくやったな、タケル!」


 ヤマトがタケルの頭を撫でる横で、串刺し魚を受け取った太一がぱちぱち、と燃え盛る炎に一本ずつ魚を立てていく。

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