日はすっかり落ちて、もう夜になった。
良い感じに焼けてきた魚を栞は空から受け取った。魚はあまり食べたことがない。美味しいのだろうか───という不安は、空腹感に紛れて消えていった。隣に座る光子郎を横目に、魚にかぶりついているのが見えて、栞も同じようにかぶりついた。熱かったので火傷しそうになったけれど、なんだか初めてで美味しかった。
夜が更け、片付けに入った頃、栞はすっかり眠くなっていた。かろうじて空の隣で薪を集めるのが精一杯、と言ったところだった。太一が空に何か聞いているのさえ聞こえず、丈が空と太一に何か言っているのさえ聞こえず。不自然なほどの眠気に、目を瞬かせる。
「あれ。栞くん、眠たいのかい?」
丈が屈んで、栞の顔を覗き込んでくるのを見て、うとうとしながら頷いた。否、彼女自身が眠たいというわけではないが、頭の中が眠れという命令を不自然なほど出しているのだ。一回でも目を閉じれば、そのまますとんと落ちてしまうくらいに。
「ああ!こんなとこで寝ちゃダメよ!…ほら立って栞。路面電車まで行きましょう。ごめん、太一、あとやっておいて」
「オッケー。ちゃんと寝ろよ、真田」
半分はもう眠っていて、誰の声も聞こえなかった。路面電車について椅子に座らされた時には傾れ込むように横になった。
「あとハ僕にまかせテ!ココまで運ンでくれテあリがとウ、空」
「こんなこと大したことじゃないわ。それにしても妙な寝付きよね」
「…タブン、疲レたんだヨ。頑張ッてたカラ」
「ふふ、そうね。…じゃああとはよろしくね、私は片づけに戻るわ」
軽快なステップで路面電車をおりていく空を見送ったあと、栞の寝顔の横に体をおろした。
「やっぱり、もたないよね」
小さな笑みを浮かべ、その柔らかな羽根で彼女の頬を包み込む。
―――…“心の中に”。
「…心、か。…ねえ…君は、そこから、あの時のように、栞を守ってるのかい」
ぽつりとつぶやいた声は、湖の中へと沈んでいく。誰もが笑い合っている中で、一人、イヴモンの表情は読み取ることはできなかった。
17/07/25 訂正
10/07/18 訂正
08/04/11 - 08/04/24
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