「…栞、大丈夫だっタ?」
「わ、たしは、平気、だよ」
「でモ、涙、」
「え…?あ、ち、違う、これは」
「太一に何モさレなかッタ、ヨネ?」
「な、何言ってんだよ、イヴモン!」
太一が赤くして反発するものだから、栞も少しだけ頬を赤く染めた。急いでお礼を言ってからしがみついていた手を離す。なんとなくだけど、火照った頬が、気持ちよかった。
「太一と仲良くなったみたいね?」
こんな状況だというのに空は笑い、肘で栞の腕をつついた。やめて、栞はやはり頬を赤くしながら言った。
「そ、それよりも、なんでシードラモン怒ったのかな…?」
「話逸らしたわねー」
「だ、だって!」
「まあいいわ、からかうのはこれくらいにしてっと…。そうね、最初は地震かと思ったけれど、…デジモンのしわざなの?」
「そんなアホな!シードラモンは殺気を感じん限り襲っては来いしまへんで!」
太一から話を聞いていた光子郎の横で、テントモンが焦ったように身体を動かした。もしこれが漫画であるのならば、面白いくらいの汗が飛び散っていることだろう。その隣の光子郎も同じ様な表情をしていた。
「あんさんら、何か悪いことしよりましたんかいな?!」
「え、あ、いや、何もしてない…はず、だけど」
だよな?と話を振られ、曖昧に首を傾げ、苦笑する。その際もじとりとしたテントモンの視線を受けて、太一は弁解するように手と首を左右に振った。
「ち、ちがうよ!俺たちじゃないって、記憶にない、……し」
しかし語尾は段々と弱まり、太一は考えるように黙り込んだ。ちらりとシードラモンの頭を見て、身体を見て、尻尾を見て――…太一の表情が一変する。
「あー!あの葉っぱみたいなやつ!あいつの尻尾だったのか?!俺踏んでたかもしんない!」
「ギシャアアアア!!」
ここがシードラモンの住処だったのかは、彼らに知りもしないことだった。そして、そのシードラモンが島の下に潜んでいたら、彼の存在は分かるはずもない。仕方のないことだと言えど、シードラモンがそれを信じるわけもない。
栞は慌てながら、太一を責める声を止めようと手を動かすが、何もできなかった。弱い自分、項垂れた顔が何よりもそれを語っていた。
――……パシャン。
小さく、水が跳ねる音が聞こえ、目を上げてみる。近くで「あんさんらのせいや」、「やだ、シードラモン怒ってる!」なんて声がした。しかしそれではない。水の跳ねる音は水の中でしかできない。シードラモンの尻尾がしたことか、否、それではない。
「…あれ、」
島が流されて行く中、栞は一人目を凝らしていた。目をゴシゴシ擦っても、それは錯覚ではなかった。遠ざかっていくどころか、ドンドン近くなっていく人影。
「石田、くん?」
その言葉は誰にも聞かれず、そのまま風に消えた。
17/07/25 訂正
10/07/18 訂正
08/04/24
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