「ギシャアアァァァ…」
そんな家族劇が面白くないと言いたげに、シードラモンは低く唸った。その瞳が、ぎらりとヤマトたちへと向けられる。
「っ石田くん、タケルくん!シードラモンが!」
栞の切羽詰まったような声に、ヤマトはすぐにシードラモンを振り返り、ゴマモンの背をゆっくりと押した。すべてが、兄の行動と重なり、胸がずくりと痛む。
「ゴマモン、タケルを頼むぞ!」
「はーい!任せてよ!」
何をする気か、ヤマトは急に手をあげて泳ぎ始めた。まさかとは思うが、おとりにでもなるつもりなのだろうか。栞はいっぱいに目を見開いて、思わずペンダントを握った。
「ギシャアアァァァ…」
シードラモンの視線がぎっと、ヤマトへと定められた。泳ぐ背中に的を絞り、先ほどよりも高く咆哮する。おそらく的を見つけられ、喜んでいるのだろう。ヤマトは、それに気づいているのだろうか。彼は、ただ泳ぎ続けた。
「ヤマト!…くそっ!なんで、なんで進化できないんだよ!」
「ご、ごめんね、太一…」
「あ、謝るなよ!お前のせいじゃないさ」
「ッヤマト!…プチファイヤー!」
少しでもヤマトの負担を減らそうとするも、成熟期には適わずに尻尾で叩きつけられてしまった。
栞は思わず目をぎゅと瞑った。怖い物など見たくはない、苦しいものなど見たくはない。
「目、瞑っちゃ駄目だヨ。ヤマトのためにも、栞、前を向いテ」
「でも、でも…見て、られない…」
「前を向くんダ。哀しくても、苦しくても、痛くても。君は前を、向かなきゃいけないんだ」
―――……お前はただ前だけを向いていろ。決して後ろを振り返ってはいけない。未来へと、歩いていけばいいんだ。
誰かの優しい声と、イヴモンの声が重なる。まっすぐな瞳を見れば、そのまっすぐな瞳は柔らかな線を描いた。
栞はまだ弱かった。臆病だった。うろたえながらこくんと頷いた。今はまだ、それでよかった。イヴモンの瞳が、更に優しく色を付けた。
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