「栞、」
「…っ!」


 びくりと肩を揺らす。声をかけてきた人物は、太一だった。頬を掻きながら、何か言いたげに栞を見ている。


「あの、さ」
「さ、さっきは、ご、ごめんなさい…っ!」
「…は?」


 ワンテンポ遅れて、太一が反応した。
 何でここまで怯えながら彼女が謝っているのか、彼には理解できない。


「だ、だって…怒らせちゃった…でしょ?」
「なんで俺が怒るんだよ」
「だ、だって…!」
「あーっ…じゃあ勘違いだ。俺は怒ってない。だからそんなに怯えんなよ」


 そう言って太一が笑うから、栞もまだ怯えつつも小さな笑みを返した。ほっと安心したように力が抜けていく。


「よかった、」
「え?」
「う、ううん!な、なんでもないっ」


 なんとなく聞かれたくなかった言葉だったので、曖昧に濁す。ん?と太一は顔を近づける。栞は急いで彼との距離を取った。
 どくん、と高鳴った心臓に関するお話は、どうやらまだ後の話のようだ。


17/07/25 訂正
10/09/15 訂正

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