「光ってるヨ」
「あ…」


 その機械は、青白く光り輝いていた。この機械がどういったタイミングで光輝くかは、何となく察しがついていた。今までの経緯を辿ってみても、同じように光り輝いたことが四回あった。それはいずれもデジモンたちが進化する兆しを見せた時だ。子供たちにピンチが迫り、デジモンたちが新しい力を手にする時といっても過言ではない。しかし今はそのような様子はどこにも感じられない。そればかりか、他の時よりも発光の仕方が脆弱だ。
 他の子供たちに危険でもあったのだろうか。太一、ヤマト、空。彼らのデジモンは進化することができるため、それを受けて発光したのだろうか。距離が遠いため、光は薄い?色々と考えられることはあるが、ちらり、と光子郎に視線を送った。光子郎のデジヴァイスも薄いものはあるけれど、しっかりと光っていた。彼自身、目を丸くさせる。そして、ピピッ、ピピッ、という電子音がきこえた。


「あちっ!あちちっ!!」


 栞はばっとテントモんを振り返り、口元を手で押さえた。急に、テントモンの身体の線に青い光が走る。蒸気が溢れ、身体が熱いと叫ぶ。もちろん、テントモン自身も熱いと連呼していた。何かのウイルスなのだろうか。栞はおろおろとペンダントを握りしめ、テントモンと光子郎を順番に見た。


「あちち!どうしたのか、ウチにもさっぱり!」


 イヴモンは素早く光子郎の横に移動して、パソコンの画面を覗き込む。


「これ以上は危険ダヨ!光子郎、早く電源切っテ!」
「は、はい!」
「もうたまらんわ!」


 パワーボタンに人指し指の力を込めて押すと、液晶画面からデータが消え、テントモンの身体の熱さも消え、そしてデジヴァイスの光も消えた。栞は、心の底からほっとした。


「これは一体、」
「…そレよリ、ヤマトたち帰ってきたヨ」


 イヴモンの言葉に、光子郎と栞は顔を見合わせる。もしこれが何かの役に立つとしたら、これはとても凄いことなのだ。二人は振り返って、動力室を出た。ゆっくりと歩いてくるヤマト、ミミ、タケルの三人とそのパートナーデジモン三匹を見て、光子郎は手を振った。


「皆さーん、すごい発見がありました!」
「すごい発見?なんだそれ」
「この工場ではプログラムそのものがエネルギーを作っているんです!つまりこの世界では、データとかプログラムとか、本来はただの情報でしかないものが実体化して…」

「おーいっ!」


 光子郎の言葉を遮ったのは太一の声だった。何やら慌てているらしく、他の二人と三匹も走っている。額にはうっすら汗すら浮かんでいるようだ。それも当たり前のことだった。アンドロモンが迫ってきている。そんなことを知らない他の子供たちは、ゆっくりと三人の方を振り返った。

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