(『守人』、)
(…ありがとう、イヴモン。守ってくれているんだね)
(当たり前、だよ。あなたを守るのが、僕の生きる証だから)
(もうそんなことに縛られなくても、自由になってもいいんだよ)
(あなたとの誓いがある限り、僕はあなたのそばにいる。…いさせて)
イヴモンは目を伏せる。
そんな彼のふわふわした毛を、撫でつけた。
(うん、分かってる…。ごめんね。傍にいたくないわけじゃ、ないよ)
(…僕こそ、分かってる。あなたが優しいってことくらい)
(そんなこと、ないよ。私は、勝手なだけだから。だから、全てをみんなに押し付けて、何も覚えていない『私』に責任を負わすの…。最低だね)
(あなたは、ただ!)
(…っ…ごめんなさい。もう限界みたい。…いいね、イヴモン。絶対。絶対、進化し、…だ……よ、)
瞬間、栞の身体がびくりと揺れた。
空は驚いて、栞の両肩に手を置いて大きく揺さぶった。
「栞?!」
「そ、空…?」
「大丈夫?!今、びくって、してたけれど…」
「え、あ…うん。と、とくになにもない、よ。ね、ねぇ。今、何が起こっている、の…?」
「え?」
空はきょとりと目を瞬かせた。今まで栞はみんなと一緒に、味方のデジモンたちとアンドロモンとの戦いを瞼に灼き付けていた。しかし当の本人は首を傾げ、ただ今の状況を把握しようと四体のデジモンを急いで見ている。空も、首をかしげた。
アンドロモンが膝から崩れ落ちる。そして彼等の狙い通り、舞い上がったのは黒い歯車だった。あれは、メラモンの時に見たことがある。
「消え、た…」
呆然と太一がつぶやく。
黒い歯車は空へと舞い上がり、忽然と消えた。
「…邪心ガ、落チタ…」
どこかほっとしたように、アンドロモンも呟いた。あの歯車のせいで、アンドロモンが彼らに攻撃をしかけてきたのだとしたら、太一の考えは外れていた。少しだけ安心して、アンドロモンを見つめる栞を盗み見た。先ほどの会話が、まだ胸の中で燻っている。
―――……おまえは。
―――……『私』は栞だよ。他の何者でも、ない。
―――……けど、おまえは!
―――……『私』も『栞』。『栞』も『私』。お互いが、同じ存在だから。
デジタルワールド、『守人』、そして『真田栞』。この世界の扉を開けるための鍵が必要なのだとしたら、それはきっと『栞』だ。そこまで考えて、頭を掻きまわした。考えるのはどちらかといえば丈とか光子郎の専売特許なので、今にも頭の中がパンクしそうだ。だから、太一はやれることをやるしかないのだろう。彼女を守る事。それなら、できるのではないかと思った。
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