そう言ってアンドロモンはふと顔をあげる。その顔が驚愕に変わったが、その後ろに控えるイヴモンを見て、柔らかく微笑んだように見えた。表情こそはないが、栞にはそう思えて何だか嬉しくなった。
 子供たちがみんなおりてくる。中へ行こうとのアンドロモンの提案に頷き、彼らは揃って中へと入っていった。


「…機械ニマギレコンダ黒イ歯車ヲ取ロウトシテ、アンナコトニナッテシマッタ…」
「黒い歯車…またか」
「助ケテモラッタノニ、本当ニ申シ訳ナイコトシタ…」
「気にすんなって!故障なんだから!」
「残ッテイル己ノ心デ、光ヲ探シテイタンダ…」
「光?」
「アア。アノ闇カラ私ヲ助ケテクレルノハ、守人ダケダト思ッタカラダ」
「だからお前、『モリビト』って言ってたのか…」


 太一はあの時のことを思い返し、少しだけ恥ずかしくなった。結局は自分の勘違いだったのだ。


「キミタチノ疑問ニ答エテアゲタイガ、私モ答エヲ知ラナイ…。ソノ代ワリ、ココカラ出ル方法、アドバイスデキル…」


 アンドロモンは横の道を示して、子供達を見る。太一を初めとする子供たちの笑顔を見て、少しだけ表情が和らいだ。


「キミタチノ幸運ヲ祈ル…。無事元ノ世界ニ帰レルヨウ…」


 子供たちが笑みを浮かべ、心を込めて感謝を述べてから、言われた通り地下水道への道に向かう。栞も最後尾を歩きながら、アンドロモンの横を通り抜けた。


「守人、」
「え?」


 名前ではないけれどそれが自分を示す言葉だと感じて、振り返る。生温かい風が吹き抜けた。


「アリガトウ」


 優しく告げるアンドロモンを見て、栞は首を横に振る。自分は何もしていない。そう、何もしていない。実際、黒い歯車を消滅させたのはテントモンが進化したカブテリモンだった。その前にアンドロモンと戦っていたのはグレイモンとガルルモンであった。黙り込む栞を見て、アンドロモンはその手を彼女の両肩においた。


「君ガコノ場ニ来テクレタカラ、少シダケ理性ヲ取リ戻セタ…」
「え…?」
「行クト良イ。君ノ光デ選バレシ子供タチヲ導イテヤッテクレ」


 首をかしげながらであったが、栞は小さく頷いた。それから、じゃあ、と先を行ってしまっているみんなのもとへと駆けた。そしてまた穏やかなで、暖かい風が吹いた。アンドロモンは、その背中を優しく見守っていた。


「何してたの?栞さん」
「え、と…あの、…なんでもない。待たせて、ごめんね」
「そんなに待ってないから平気だって。行こうぜ!」


 少し遅れてしまったみたいだが、みんなが待ってくれていたことに凄く嬉しくなった。口元が、笑みを浮かべてしまうのが分かる。再び歩き出した太一たちの後を追い、栞も前へと一歩進む。最後に一回だけ後ろを振り返った。もうそこにはアンドロモンの姿はなかったけれど、栞は彼の見守ってくれているような気がした。
 そして子供たちは地下水道を歩いていく。その先に元の世界に帰れるためのヒントを求め、歩き続ける。そしてこの工場を離れると光子郎のパソコンが使えなくなった。それがこの世界の謎を解き明かす鍵の1つであったことは、まだ誰も気づいていなかった。


17/07/25 訂正
10/09/24 訂正

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