( 一馬っ、 )


 じわりと涙が瞳の端から滲みだす。震える手は抑えきれず、揺れるペンダントは赤い光線に反射した。


「お姉ちゃんたち!助けにきたで!」


 きらりと反射した赤いペンダントの中に、栞はヌメモンたちの姿を見た。急いで振り返る。やっぱり爆風の中にヌメモンがいた。言うや否や彼らは必殺技を、もんざえモンの額に向かって次々と投げていく。


「ヌメモン!」
「ヌメモンがなんで!?」


 彼等が戦うよりも、むしろパルモンが戦った方が、少しの勝機はあった。彼らでは適うはずないのだ。それを、彼等はよく知っている。しかし、ミミを護ろうと必死に戦っている。彼らの淡い恋心が、ミミの助けとなっている。栞は、ぱ、と心の奥底が光るのを感じた。


「ヌメモンが、私のために戦ってくれてる…?ウンチを投げるしか、取り柄がないのに…」


 栞の手を握りしめながら、震える声を抑えきれずミミはそういった。『守る』という小さな想いは、いつしか大きな花を咲かす。
 パルモンはきっともんざえモンを見て、わなわなとふるえた。


「私だって!!ポイズンアイビーッ!!」


 張り合わなければいけないと思ったのかは分からない。居てもたってもいられず、パルモンは駆けだした。しかし、ポイズンアイビーはもんざえモンの一本の腕に憚れる。


「ポイズンアイビーが効かない!?」
「あれハ完全体ダ。所詮成長期の技で適うわけがなイ」
「…でも、ヌメモンは戦ってる、」


 適わないと知っていても、必死に立ち向かう姿は、誰よりも美しい。誰よりも素敵だ。体当たりしては蹴られ、投げては殴られ。それでも、諦めないで、立ち向かう。


―――…しゃらん。


「ラブリーアタック!!」


 もんざえモンの声に反応して、青いハートが宙に浮く。はっ、と何かに気づいた。あの青いハートが、感情を奪いとるものなのか。ぴこん、ぴこん、と危険信号が栞の頭の中で鳴り響く。


「ミミ!逃げてッ!!」
「、ッ!栞、何してるんだ!」


 青いハートの先には、小さな儚い命。
 栞は駆けだしていた。ミミの身体は押しやり、自分はその小さな命を抱きしめる。

たった一つの命救えずに。
誰を救えるというの。


 ぽつり、と誰かが呟いた。
 泣きたくなるくらい優しくて、吐き気を催すほど暖かい。


「栞ッ!!」


 カッ、と頭の中で何かが割れた。
 何かの記憶が、甦る。 ――そんな気がした。


17/07/25 訂正
10/10/28 訂正

back next

ALICE+