★ ★ ★
「守人」
「あれ?珍しいね。狩人がここにいるなんて」
花畑でデジモンに微笑む彼女に声をかけた。暫くして振り返り、きょとんと目を丸くさせる。
「お前の行く先には俺もいる」
「心配しなくても、私は何もしないのに」
「『お前』じゃない。『お前』を狙う者がいるからだ。四聖獣も言ってただろ。一人で行動するな、と」
「…みんな過保護すぎるよ」
黒い髪を揺らしながら、ため息をついて。幼少期のデジモンに抱っこをねだられて、優しく応じて、微笑んで。そんな時間が、いつまでも続けばいいと思っていた。俺がいて、彼女がいて、デジモンたちがいて。そんな安らかな時間が、ずっと続くと思っていた。
そんな時間が、続けばいい、と。
「やめろ!」
必死に願いを続ける彼女の腕を取る。ぼろぼろになった腕が、痛々しく俺の目に飛び込んでくる。やめろ。もうやめろ。
「頼むからもうやめてくれ!」
「…あの子を助けたい」
「そのためにお前の命がなくなったらどうする!?全員の命と、一人の命と、秤にかければわかることだろ!?」
「ねえ、」
「なんだよ!」
「たった一人の命を救えず、誰を救えというの?」
夕風が、彼女の黒い髪と、俺の白い髪を揺らした。赤い夕陽に、彼女の黒い髪はよく映えると、ぼんやり考える。
なのに心臓をわしづかみされたように、彼女の灰色の瞳に射抜かれて、苦しくなった。
「私は守人だもの。この世界を、この世界で生きる全ての命を等しく守る使命に在る」
「シオリッ、!」
「――シキ。そう願うことは、罪なの?」
いつだって、優しい笑顔でみんなを見ていた。
いつだって、柔らかい声で、俺を励ましてくれた。
いつも、いつも、いつも。
だから、お前は、俺が守る。
かならず、どの世界に居たって、どんな場所だって。
シオリ。
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