★ ★ ★




「ん、」
「栞ッ!!」


 目を開けると、空がほとんど泣きそうな顔をして、栞を抱きしめていた。きらり、と瞳に赤い光が差し込み、反射的に手で顔を覆う。栞は先ほどの夢を思い出す。そういえば、あの場所も夕日が指していた、とぼんやり考えた。不意に強い力で抱きしめられる。栞は吃驚して腕をどかすと、空がやっぱり泣きそうな顔で、栞を抱きしめていた。


「もうっ、ムチャはしないで!どれほど心配したと思ってるの!?」
「ご、ごめん、」
「ソウだヨ、栞。僕ガ、何のタメにいルと思ッてるノ…」


 空に強く抱きしめられ、イヴモンにはくどくどと説教された。そのたびに栞は強く頷き、嬉しそうに笑っていた。彼女が起きたことに気づいたのか、太一たちが直ぐに駆けてくる。その後ろには自我を取り戻したもんざえモンや、解放されたデジモンたちもいる。


「栞さん!良かったわ…!」
「ミミちゃん、」
「本当に申し訳ないことをしました、守人」
「え、そ、そんな!」


 大きな体を折り曲げて、もんざえモンは深々と頭を下げた。栞は急いで首がはち切れそうになるくらい、ぶんぶん振った。小さな笑顔を浮かべられると安心して、栞の声は掠れてしまった。


「歯車、取れて良かった、」
「あなたは、本当に優しいお方です」
「そっ、そんなこと…」
「昔も、そうやってあなたに助けてもらったことがあります。おそらく、私だけではなく、誰もが…」


 優しい口調は栞の腕の中で眠るヌメモンへと向けられていた。その意図が分からず栞は首を傾げたので、もんざえモンは再び優しく微笑んだ。それが何となく嬉しくて、つい、頬が緩んでしまう。


「なーにニヤニヤしてんだ?」
「ニ、ニヤニヤ?してない、よ!」
「ほっぺ、揺るんでるぜ」


 ヤマトに指摘され、頬を覆い隠すように両手で包み込む。恥ずかしくなって俯こうとしたが、太一が笑いながら頬をつつくからその行為も中断された。


「そうだ!ワシを助けてくれたお礼に、ハッピーにしてあげましょう!」


 きょとん、と全員がもんざえモンを見上げる。『ハッピーな気分』?そういえば、もとの能力は、人をハッピーにするということだったような気がする。栞は、空に手を借りてヌメモンを腕に抱きながら立ち上がった。


「これが本当の…ラブリーアタック!」


 真っ赤なハートに囲まれた子供たちの笑い声がおもちゃの街に響き渡る。

―――…こんなに幸せなのは、おそらくこの世界に生きるすべてのものが、彼女を包み込むからだろう。

 『仲間』がいてくれるから『栞』が在る。 栞が『在る』理由は、『守人』だから。

 真っ赤なハートに包まれて、栞はそのことを考えていた。


17/07/25 訂正
10/10/28 訂正

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