「僕、栞の作ルものダったラ下手物でモ食べレる自信あるヨ」
「イ、イヴモン…。あんまりフォローになってない、」
「エ?」
「イヴモンは味覚音痴なんでっせ」
「エー、何そレ。失礼ナこと言うネ。僕は栞が作ッたモノなラ何でも食ベれるヨって!」
「も、もういいから、イヴモン…!」
「ちょうど良いコンビじゃない、栞」
「う、嬉しいのか悲しいのか分からない…」
また顔を赤らめて、でも今度は柔らかく笑って。そんな栞を囲んで、子供たちにも笑いが巻き起こる。
丈は遠目でそんな光景を見ながら思った。――最初見た時は、ここまで頼りない子がいるもんかと思った。絶対何かするにも足を引っぱるタイプだったし、丈の悩みの種も栞だった。でもいざ一緒に過ごしてみたらどうだろう。栞ほど頼りない子はいなくても、栞ほど凜とした強さを持つ子もいなかった。初めはみんなに対して一歩引いた様子でいても、今では彼女がみんなの中心となっている。彼女がいるから誰かが笑い、誰かが笑うから彼女も笑う。最近ではめっきりその循環だった。たとえてしまえば、太陽のようなものだった。最初は暑かったりでうんざり思うけど、無くなったらそれほど淋しく悲しいものはない。彼女は、そういう存在だった。
「あ、あの、城戸さん」
「………」
「その…城戸さん、」
「え、あ…。な、何だい、栞くん」
今し方考えていた栞が突然目の前で申し訳なさそうな顔をしていれば、誰でも驚くだろう。
「あの、私とミミちゃんと一緒に、ゆ、ゆで卵作ってくれませんか…?」
「"ゆで卵"?」
言葉をオウム返しすれば、彼女の顔は最大限まで赤くなる。ちらりと他の子供を見てみても、少し笑いを噛みしめているようだった。そして再び彼女を見れば、どうやら恥ずかしさを堪えているようだ。
「ミミちゃんと私だけじゃ心配だって、みんなが、」
「…僕は、別に構わないけど」
「あ、…ありがとうございます」
「あ…栞くん、それと、僕のことも名前でいいよ。呼びにくいだろ?」
「…はい、丈さん」
少しだけ安心したように、また太陽の日溜まりのような笑顔を見せた。その笑みは、丈の中にある責任感を少しだけ軽くしてくれた。
17/07/25 訂正
10/10/28 訂正
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