「俺、醤油!」
「あたし、ソースよ!」


 その眉が徐々に険しく寄せられていく。


「私は、塩、かな…?」
「僕はポン酢を少々…」
「あはは!」


 控えめな二人を笑い飛ばしたのはミミだった。


「みんなヘンよォ!やっぱり目玉焼きって言えばお砂糖よね!」
「…え?」
「あたし、その上に納豆乗っけたのも大好き!」


 一斉に、そう一斉に子供たちの顔が青ざめたのは言うまでもない。


「なによォ」
「な、納豆?」
「それ、ヘンすぎるだろ…」


 不機嫌そうな顔になるミミに、みんなは無理矢理笑顔を作ろうとしたが、それは引きつっただけで本当の笑顔にはなれなかった。多少のことは庇う空ですら、絶句している。その隣の栞とタケルは口を押さえていた。想像しただけで、少し吐き気を催す。


「み、みんなは目玉焼きにそんな変なものをかけるのか?」


 だが、丈にしてみれば、ミミも他のみんなも同じくらいだったらしい。急に愕然とし、箸を落とした。


「ショックだぁ!日本文化の崩壊だ!」
「お…おい、丈…」


 頭を抱え、発狂に近い絶叫をあげる丈を見て、ヤマトは眉を下げ太一は驚いた。


「そこまで悩むか?フツー…」
「ま、納豆は悩むかも知れないけど」
「だって目玉焼きには塩コショウだもの!ソースでもマヨネーズでもなく塩とコショウ!」
「やれやれ…」


 一つ、ため息をついたのは、彼のパートナーデジモンのゴマモンだった。


「丈は融通がきかないな…」
「何だと!?」
「だってそうだろ、どうでもいいことで悩むし…」
「僕のどこが融通がきかないんだよ!」
「ほら、すぐムキになる…」
「ウリウリ…」

「あーあ、始まった…」


 お気楽なゴマモン、そして誠実な丈。どう考えても、二人の考えが合うわけがなかった。
 それだけじゃなくゴマモンはすぐに丈をからかうので、彼は余計に苛立ちを隠せなくなる。
 栞はすぐぎゅ、とペンダントを握りしめる。――怖い。(ちょっと志貴、栞、もう少しどうにかならないのかしら?)(うるさくてたまんねぇよ!これだからガキは嫌いなんだ!!)どうしようもなく、怒鳴る人が怖い。視線を彷徨わせることができなくなると、彼女はそのまま俯いて、目を瞑った。耳を塞いで頭を項垂れて――さすがに耳を塞ぐまではしなかったが、これが彼女の防衛本能だった。いち早くその状況を察知したのはヤマトだった。立ち上がってゴマモンに向かう丈の腕を取る。

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