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「…これまでか…!」


 次にくる衝撃に備えて、丈はぎゅ、と目を瞑った。腕の中のゴマモンも、同じように目を瞑った。――どうして、守れないんだよ。どうして、進化できないんだよ。丈を守らなければいけないのに、丈を助けなければいけないのに。
 大事な、丈を――!


「丈ッ!」
「…太一?」


 ばさ、とはためく羽音が聞こえた。丈は慌てて上を向くと、そこには赤い体をした、バードラモンの姿がある。そしてその足には、太一とアグモン、空、栞とイヴモンの姿があった。栞…丈の頭の中には、昨日の栞の姿が甦り、すぐに消えた。


「助けに来たぜ!」
「太一、空、栞くん…!」


 『みんながいる。一人ではない』――ああ、確かにそうかもしれない。


「大丈夫ですか…!?」
「なんとか…って、危ない!」


 バードラモンによって押し潰されていたユニモンが苛立ちを隠せず、黒い歯車の影響によって、狙いを定める。大きなもの、つまりそれはバードラモンを狙った。
 背を向けていた太一たちには見えなかったが、それは丈たちからは見えていた。バードラモンの巨体に、ユニモンの得意技ホーリーショットが炸裂する。バードラモンが悲鳴をあげながら、崖から落ちていった。


「バードラモン!」


 空の悲鳴も響く――でも、泣いていられない。空はすぐに崖をくだり、バードラモンのもとへと駆けていく。


「アグモン!」
「うん!」
「アグモン進化ァ!」


 グレイモンに進化したアグモンは、ユニモンと戦いはじめる。太一はグレイモンの傍から離れず応援を、復活したバードラモンと空は再び戦いに身を投じる。
 時折聞こえてくる太一やグレイモンの悲鳴、空とバードラモンの悲鳴。丈は何も出来なかった。後輩たちは一生懸命戦ってくれている、なのに。


「僕は…」
「丈さんにも出来ること、あるんですよ」


 こんな時、パニックに陥りそうなのは大抵栞のはずだった。けれど彼女は、戦いになるとやけに凜と冷静になる。今だって親友や仲間が危険だというのに、彼女はイヴモンを腕に抱き、ただユニモンを見ていた。その視線は、ユニモンの背中へと注がれている。


「黒い、歯車…?」


 ぽつり、と丈は呟き、栞を見た。彼女は、少しだけ笑みを浮かべ、その背中を見続けている。


「…あれは闇です。そしてみんなが持っているのは、光」
「『光』…?…そうだ!」


 彼の頭の中で甦ったのは、今までの記憶だった。あの歯車を、丈は知っている。初めはメラモン、そしてアンドロモン、もんざえモン。狂った彼らの元凶は、あの黒い歯車だった。そして彼らが正常に戻ったのは、黒い歯車が消えたからだ――丈は立ち上がっていた。


「あれを、外せば…」


 ちょうど下を見れば、ユニモンが羽ばたいていた。決意なんて、無いに等しい。覚悟なんて、そんなのどうでもいい。考える前に実行する、それは丈の中に無意識に芽生えていた。


「丈!?」
「くう…!」


 丈は無事ユニモンの背中に着地できたが、当然ユニモンは不快に思う。更に丈が黒い歯車を外そうとすれば、痛みも生じる。


「丈!!」
「こ、これを…これを外せば…」


 歯車を持つ手に力を込めると、ユニモンは痛みで声を荒げ鳴いた。


「うわぁあッ!」
「丈、やめろ!ムリだよ!」
「駄目だ!僕がやらなきゃ…僕がみんなを守るんだ…!僕は、僕は…一番大きいんだから、僕がみんなを守る!」


―――…しゃらん、しゃららん。


 栞は祈るように手を組んだ。遠い地点を目指し、心の中で光を生み出すイメージをする。


(…ゴマモンに力を与える)
「わあ!」
(彼は、丈さんを守る)
「丈!!」
(その思いが、 すべてを)
「わああぁぁぁッ!!」
(――守る)
「丈ーッ!!」


―――…しゃらららん!


 彼の思いが、彼自身を強くする。
 光が点り、それはデータを越え、今再び。

 カッと光り輝いた───それは丈と栞のデジヴァイス、そして栞自身だった。


「ゴマモン進化ァ―――イッカクモン!」


 ゴマモンから進化したイッカクモンは、極寒の地に適した体の海獣型デジモンだ。彼は1回だけ栞を見て、丈の落下地点へと急いだ。

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