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 栞が気づいた時に、もうユニモンの姿は彼方に遠ざかっていた。その背中に黒い歯車がないことに、栞は少しだけほっとする。


「栞くん!大丈夫かい!?」


 はたと顔を上げれば、空と太一と丈、それからそのパートナーデジモンたちが栞の元へと駆け寄ってきた。少しだけ笑いを浮かべて頷けば、丈はほっとしたように胸をおろした。


「よかった…みんな無事だったんだ…」
「ああ、丈のおかげだよ。見直したぜ!…昨日はゴメンな」


 決まりが悪そうに太一は頬を掻いていると、丈が気にするなと手を差し出す。彼の顔には、昨日まででは考えられないくらいの笑顔が溢れている。二人は握手を交わしていた。


「丈先輩の勇気がゴマモンを進化させたのね」
「いやあ…」
「いや、それは違うよ!」


 照れる丈を一喝したのはゴマモンのやんちゃな声だ。彼の顔もまたすっきりとしている。


「丈の勇気というより、オイラが頑張ったおかげだよ、多分!」


 一人で頷きながら胸を張るゴマモンと目を合わせるためか、丈は屈み込んだ。ゴマモンは元来素直ではない、というより不器用なのだ。丈はそんなゴマモンの性格に気づいた、それだけで十分な一歩だった。


「ありがとう、ゴマモン!君のおかげで助かったよ!」
「…え、あ、ああ…」
「ゴマモン照レてル」
「うるさい!照れてなんかないよ!」


 イヴモンがちゃちゃをいれればゴマモンは更に顔を赤く染めた。


「丈さんとゴマモン、良いコンビですね」
「…それより、栞くん」
「なんですか…?」
「…いや、何でもない。君にもお礼を言わなきゃね、ありがとう」
「わっ、私は別に、何も…」


 改めてお礼を言われると何だかとても恥ずかしい。何もしていないのは事実だったから、余計に羞恥心が沸き起こる。ぶんぶん手を振れば、丈は穏やかに笑った。


「さあ、みんな!行こうぜ、頂上に!」


 そんな太一の声を筆頭に、栞たちは頂上目指して歩き始めた。とはいっても、だいぶ上の方まできていたので、頂上まではもうすぐといったところだった。


「やったぜ、頂上だっ!」


 彼らの前にそびえ立っていたムゲンマウンテン、その頂上から見える景色はどのようなものだろうか。


「!?」


 すとん、と栞の肩からショルダーバックが落ちた。


「…あ…」


 誰からともなく声が漏れる、そして顔に浮かんだのは絶望に近い色だった。思わず目を見開き、あたりを見渡す。


「こ、これは…」


 また奇妙な風が吹いた。
 彼女たちは、ファイル島が絶海の孤島であることを知り、落胆するのであった。


17/07/25 訂正
10/11/08 訂正

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