024 ひとりよがりの心臓を抱いて




 栞はただ、目の前に広がる光景に、絶句した。完全なる孤島である───これからの道が、途絶えられた気さえした。


「なんて事だ…」


 丈の嘆きも、今なら同意できる。


「ここは本当に島だったんだ…」
「丈、」


 遅くなった彼等を心配したヤマトたちも、同じように孤島だと知ると、やっぱり落胆の色を見せた。ムゲンマウンテンに登れば、これからが分かるはずだった。そう信じて、丈は危険を顧みずに登ってきた。


「これから…どうすればいいんだ…」


 なのに。
 世界は、あまりにも残酷だった。


「僕たちは…どうすればいいんだァ!!」


 落胆の色を隠せない丈を筆頭に、子供たちの士気が下がっていくのを、太一は感じていた。わざと場の雰囲気を明るくしようとしても、空気を読めないレッテルを貼られるのは嫌だと座り込んだ。ガシガシと頭を掻いて、目の前の風景を目に焼き付ける。
 行く道を閉ざされたのも同然の中、それでも諦められないのは彼の中の何かが、まだ道はあると信じていたからだ。唯一キャンプに持ってきた単眼鏡で島を見渡し、何かの役に立つかもしれないと紙を取り出した。太一は勢いよく何かを記していく。


「太一ィ、何してるのー?」
「地図を作ってるんだ!これから何かの役に立つかもしれないからな!」
「地図…?」
「なるほど、それは良い考えですね…」


 太一の言葉に、栞と光子郎が後ろから覗き込んだ。


「…え?」


 少しだけの希望を胸に覗き込んだ地図は、まるで1、2歳児が描くようにでたらめだった。まさかの太一記号で記された地図は難解で、これを見たところで何かの役に立つとは到底思えない。


「とても役に立つとは思えん…」
「太一って図工、苦手だったよね…」
「…ははは」
「書いた本人がわかってるからいいんだよ!」


 同級組からの言葉の数々(若干一名苦笑い)に、太一は顔を真っ赤にして怒鳴り返した。


「で、でも…案外、分かりやすいんじゃない、かな…?」
「これのどこが分かりやすいんだよ…」
「おいヤマト失礼だぞ!」


 後ろから覗き込みながら、栞は小さく笑った。
 これが、シェルモンの襲撃にあった海だとすれば、ここにある小さな湖は、シードラモンと戦った場所だ。――ぐちゃぐちゃなようで、すんなり頭の中に入ってくる地図に、笑いが零れた。

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