「…信じて、くれなくてもいい」


 絞り出した声は、少しだけ、悲しみに震えていた。


「君が信じたいものを、信じればいい。けど、それが、君にとって害を為すものだとしたら…僕は君を傷つけてでも、君を守る。僕は、僕だけは、君を裏切らない。約束する。絶対だ。たとえ君がどこへ行こうとも、何をしようとも、君のために傍にいる」


 栞の嗚咽が響く中で、イヴモンはその頬に顔を押しやった。


「大好きだよ、栞――」


 愛情に満ち溢れた声は、栞の心にもきちんと届けられていた。本当は、分かっている。彼は、イヴモンは、己を決して蔑になんて決してしない。絶対に、栞を裏切ったり、悲しませるようなことはしないことを。
 けれど頭で理解していても、心が追いつけない。今ここで、太一たちの元へ行こうと言われたとしても、栞は行くことなど出来ない。


「…とりあえず、今日はここで野宿しようか。明日になれば、決着はついていると思うから」


 彼女の心を読み取ったように、寒くない?と声をかけられたから、栞はこくりと小さく頷いた。彼は優しく微笑むと、その横に腰をおろした。その間に会話など一切なかった。それでも、イヴモンは栞の横に居た。
 夜も更けたが、栞は進行する『守人化』により眠ることさえも失ってしまった。膝を抱え、木に寄りかかって夜空を見上げていた。


「ねえ、栞」


 ふ、とイヴモンが、名を呼んだ。栞は、返事ができなかった。


「君は闇に染まりやすくて、影響を受けやすい。そして君の根底部分は、確かに、闇の力が強いかもしれない」


 思いもよらない話に、彼女は抱え込んだ膝に回す腕の力を強めた。

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