「遊びは終わりだ!行くぞ!!」


 ヴァンデモンを追って日本へと行く為、精一杯の力でゲートに向かって走り出した子供たち――「まったく、見てられないわね」そんな時、何者かによって、行く手を阻まれた。
 それは小さな猫型のデジモン。体の大きさだけでいったら、アグモンたちとそうそう変わりはしない。涼やかな声は、呆れに満ちていた。もちろん脅威になりえないくらいの存在感だというのに、栞は目を見開く。

―――…しゃん。

 一回、鈴の音が頭の中で響いた。「知ってる、」思わず漏れた声は、誰にも届かない。自分はあの猫を、知っている。しかし、あの子がどういうデジモンなのか、全く分からなかった。名前だけはわかる―テイルモン。紫色のモヤが、栞の記憶の彼女の部分だけを上手く覆っている。そんな感じだ。


「またちっこいのが現れた…しっしっ、どきな!ケガしたくないだろう?」
「……舐めてくれるわね」
「っだめ!」


 軽くあしらった丈に、彼女の瞳は不機嫌そうに鋭く細められた。――本能が告げる。あのデジモンは、危険だ。先ほどまでのヌメモンや、ナニモンたちとはレベルが違う。細められた瞳から映し出されたのは紛れもなく彼女の心の闇で、栞は前に飛び出した。
 テイルモンは、栞を一回ちらりと見たが、直ぐに唇を舌舐めし、「見てなさい」そう冷たく呟くと、一気に跳躍した。


「ネコキック!」


 体を空中で身軽に捻ったテイルモンの足は、グレイモン、カブテリモン、イッカクモンへと順々に踏みつけていく。ただ踏みつけているだけだというのに、彼らの体は地面へと沈んでいく。相当なキック力だということが分かる。


「こいつ見かけより強いぞ!」
「パンチよ!」


 次いでトゲモンが拳を向け、軽く避けたテイルモンのもとへと、ガルルモンの牙が向けられる。しかしやはり身軽なテイルモンは、くるりと身を翻し、いとも簡単に避けてしまったが、彼等の目的は何もテイルモンを倒すことではない。既に日本へと向かってしまったヴァンデモンを追いかけて、8人目を――大げさに言えば日本を守らなければならないのだ。


「今のうちだ!」
「行きましょう!」


 ゲートに向かって駆けだした子供たちに、テイルモンは自前の勘の良さで直ぐに気づいた。「そうはさせないわ!」高らかに叫べば、彼女の声に呼応したリングが、チリンと鈴の音を鳴らし、金色の光を放った。彼女の先端――言えば尻尾につけられたリングから放たれた光は次第に輪になり広がり、その光が触れた石像が、生き物のようになめらかに動き出した。


「あれは!?」
「デビドラモン…!」


 栞の呟きに、子供たちは動きを制止する。動き出したデビドラモンは巨大なゆえに、このまま子供たちが進めば危害が加わる。「くそっ!」くしゃりと顔を歪めた太一は、拳を握りしめた。こんなところで足止めを食らうわけにはいかない――彼の赤い闘志に反応したのはグレイモンだった。

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