「栞…」
赤い瞳をした少女は、眩いばかりの光の中にいた。それはたかだか10を過ぎたばかりの、幼い少女だった。誰かの後ろに隠れ、人からも世界からも隠れ、何かあればすぐに心に蓋をしてしまうような、弱い少女だった。彼女は弱い人間だった。
「栞、あなた――」
守られてばかりのちっぽけな女の子は、今誰かを守るために存在していた。
空の瞳の中に映っていたのは紛れもなく、栞であるというのに、そこにいたのは彼女であり彼女ではないような気がして目を擦る。しかしやはり空の目に映っていたのは、栞だった。泣いてばかりで、自分の後ろに隠れていた、栞だった。
「紋章が…!!」
「僕のも光ってる!」
彼らの勇気が、友情が、愛情が、誠実が、知識が、純真が、希望が、そして光が、そんな彼女の心に反応した。選ばれし子供たちの手から、彼女に呼応するように光が漏れる。
光り輝く紋章たちに、ヴァンデモンの顔が歪む。――読み違えたとしかいいようがない。ただの弱い人間に成り下がった守人を支配することなど容易いことだと考えていた。一番厄介だったのは狩人の残り火だが、その狩人はもういない。残骸すら残っていない。だから彼女を守る媒体は、ここにはない。だというのに彼女は闇から抜け出した。
もはや、先程までの意思のない瞳はしていなかった。確固たる曇のない眼で、ヴァンデモンを捉えていた。
「なぜだ――なぜ…!!」
「みんなの声が、聞こえたから」
「声…だと…?」
「真っ暗で何も見えなかった。だけどみんなの声が聞こえた。その声はね、私は一人じゃないんだって、教えてくれた。諦めるなって、叱ってくれた。一緒に戦うんだって、頑張れって、 迎えにきてくれた」
「っ!!」
そうして彼女はゆっくり、微笑った。
―――…たとえあなたが闇に生きるデジモンだとしても、それを使命としても、あなたも私が守るべきデジモンだから。
それがまるで、あの日見た笑顔のようで。ひどく、焦燥感にかられた。ぎり、と唇を噛み締める。なぜ挫けない。なぜ壊れない。――なぜ、自分のものにならないのだ。
「―――あくまでも私のもとにくだらないというのならば――ならば―もうお前に用はない、消えろ、守人――!!」
目の前にいた栞に向けて、赤く光る拳が振り上げられた。いち早く、行動できたのは、タケルだった。
「栞さんが…!! パタモン!!」
「うん!!パタモン進化ァ!!――エンジェモン!」
眩い光を受けて、天使は舞い降りる。「しまった…!!」更にヴァンデモンの瞳には、焦りが見えた。覚醒した守人の光を受けた天使の力は、計り知れない。
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