「ヘブンズナックル!!」


 一直線に放たれたエンジェモンの攻撃は、ヴァンデモンと、その側近にいたファントモンに突き刺さる。パリン、そう、小さな音をたて、ファントモンの姿は砕け散った。
 この一撃が相当深かったのか、ヴァンデモンは胸をおさえ沈み込む。くぐもった苦痛の声を吐き出し、荒い息をはいた。額には、いくつもの脂汗が浮かんでいた。
 脳内を横切るのはいつだって、夢に見た世界だった。全てを暗黒が支配する。全てを暗闇に染め上げる。傍らには、必ず秩序が存在する。自分のみを、守る、秩序を。


「観念しろ、ヴァンデモン!」
「…ふ、ふふ。このくらいで――私を倒せるなどと――」


 彼は振り返る。苦痛に満ちた表情を必死でこらえ、ある1点を見つめた。瞬間、少しだけ、笑みを浮かべる。


「倒せるなどと思うな!!」


 視界に映ったのは、あの少女の姿で。――まっすぐ自分を見る姿に、まるで恋に似た感情を抱いていた。
 腕を広げる。ショーの始まりだと言わんばかりに、表情を歪められていた。だからこそすぐに、気付いた。足が一歩前に出る。首は横に振った。その行動を、抑制させるように。


「ヴァンデモン、だめ、!」
「もう遅い…!!」
「やめて!」


 栞は手を伸ばした。
 小さな小さな、少女へと。


「ナイト――」


 向けられた先は、小さな光の種。「ヒカリちゃん、!」しかし短い自分の腕が、この手が、その少女に届くことはなかった。――守ると豪語したくせに。守れない。弱い自分など、いらない。


「お願い、やめて――っ、!!」
「くっ、!!」


 頭の中で響いたのは、自分を絡め取るいくつものデータだった。分析、出力を何度も繰り返し、出した答えがそこにあった。その答えに反応した栞の体が光り輝く。敵意をもった守人の光は、毒だ。
 ヴァンデモンの体が、小さく揺れた。しかし、彼の瞳から野望は消えていなかった。苦痛に耐えながらも、まっすぐヒカリに向かって手は伸ばされる。――間に合わない。


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