「ヒカリ――!!」
「ヒカリちゃん!!」
太一の声がお台場の空に響き渡った。守らなければならない、大切な妹が。たったひとりの妹が。目の前にいるのに、届かない――!!
絶望にみちる子供たちを嘲笑うかのように。たった一つの光の種をむしり取るように。ヴァンデモンは腕を広げた。
「ナイトレイド――!!」
――光を探し求めていた。ずっと、ずっと。暗くて、寒くて、誰からも相手にされなくて、一人でもがき続けてきた。そんな時、あなたに救われた。あなたがいてくれた。あなたのためなら、この命、いくらでも差し出そう。何度でも、いつの日も。
だから。これは義務なんかじゃない。
だから。これは、きっと。
テイルモン。
あなたにあえて、私は。
私は――。
痛みを訴える体に鞭を打った影が、するりと彼女たちの前に飛び込んだ。
「ウィザー、モ、――」
そして、敬愛すべき守人よ。我らが秩序よ。
私のたった一つの願い事を、叶えてくれた人よ。
視線は次いで、彼女に向けられた。
彼は、微笑んだ。
隠されていた口は何かを象る。
「ウィザーモン、!!」
時がこれほどまでにゆっくり流れるものなのかと思った。倒れゆくその姿は、なぜだろうか、どこか誇りに満ち溢れていた。これほどまでに、美しく。栞は急いで駆け寄り、その体を抱きとめた。
「っ雑魚が…!!邪魔しよって…!!」荒い息を吐きながら、ヴァンデモンは憎々しげに吐き捨てる。
「ウィザーモン…っ!!」
「ウィザーモーン!!死んじゃだめ!!死なないで!!ウィザーモオン!!」
駆け寄ったヒカリは涙をこらえきれず、その大きな瞳を雫で濡らした。それは、テイルモンも同じだった。いな、それ以上かもしれない。溢れ出た涙は、栞に抱きかかえられたウィザーモンの頬に滴り落ちる。ふ、とウィザーモンはそんなテイルモンに視線を送り、優しく微笑んだ。
「無事、か…?テイルモ、ン…」
「ウィザーモン…っ、すまない…っ」
「何がだ…?」
「こんなことに巻き込んでしまって…っ!!」
「いいんだ…」
彼女と過ごした日々を愛おしみながら、噛み締めるように、ウィザーモンは呟く。
「君に会えなかったら、私は意味のない命を長らえただけ…。君にあえて、よか、った」
「ウィザー、モ、ン…っ」
「……守、人」
「……なあに?」
微笑む彼は、手をのばす。まるで、彼女を探すような仕草を受けて、その手を掴んだ。
「あ、なた、は、素晴らしい、お方、だ…。ゆ、えに何、度も道…に迷、われる…だろ、う。けれど、忘れないでほしい。あなたは、我らのたった一つの心、なのだから――」
「…うん」
「……ああ、テイルモンに会え、救われ、あなたのぬくもりに支えながら行けるのならば、何も、悔やむことなどないな…」
独り言のような、呟きは、風にのり消えていく。彼は、そっと目を閉じた。その体は、データの崩壊を始めていた。
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