「セイントエアー!!」
頭上に掲げられた両腕から大きな光の輪が現れ、地上に降り注がれる。邪悪な力を持つものの動きを縛り、聖なる力を持つものには祝福を。まるで守人の放つ光の暖かさや煌きに似ていた。
「力が――みなぎってくる!」
「今だ!!」
「エンジェウーモンにパワーを!」
みんなの、聖なる思いが込められた力が、エンジェウーモンのもとに集結していく。個々の思いが、その場に木霊した。ヒカリを抱きしめる手に力をこめ、栞は空を見上げる。胸に宿る願いが、世界に解き放たれる。
願う思いは邪な気持ちではない。データを改ざんしたり、消滅を願うものではない。ただ、彼らに祝福を。彼らに幸福を。
「おねがい。――終わらせて、」
集結した思いに加わった願いは、力を秘めた。頭上に放たれた攻撃が光となってエンジェウーモンに降り注ぐ。七色の光を帯びた彼女は、弓矢を生み出した。みなの思いを矢に乗せ、射抜くために。
光を闇に。世界を、この手に。儚い夢が、花となり散りゆく。ヴァンデモンの表情に浮かんだのは、今までに感じたことのない、死への恐怖だった。
「や、やめろ…!!!」
「ホーリーアロー!!」
無常にも、非情にも。弓矢は止まることなく、一直線に、ヴァンデモンの胸を射抜いた。同時に放たれた光の電撃が、天の裁きにも見えた。ヴァンデモンの瞳が、最後に栞をとらえる。憎々し気に、それでもどこか愛おしいものを見るように。何とも言い難く歪められた表情を、栞はただ、悲しげに見つめていた。
―――ヴァンデモンの体が塵となり消えていく。
戦いは終わったのだ!東京は、日本は、守れたのだ!
わ、と声をあげた子どもたちだったが、そんな喜びもつかの間、すぐに揺れ始めた足元に気を取られた。栞は急いでヒカリの体を守るように抱きしめ、周りを見回す。
「ここは危ないわ!急いで逃げましょう!」
「ヒカリちゃん、」
「はいっ」
「みんな!!近くのデジモンに乗れー!!」
空の一声で、個々にデジモンに飛び乗り、フジテレビをあとにした。大きな戦いの爪痕に耐え切れなくなったのだろう。パキッと音を立て柱が崩れるのとほぼ同時に、球体展望室が大きな音を立て、崩れ落ちた。
間一髪のところで逃げおおせた子どもたちは、ようやく戦いの終わりを喜ぶことができた。
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