★ ★ ★
栞の呼吸も落ち着き、顔色も土気色から生気を取り戻したのが、比例して子供たちの表情は暗くなっていた。―ウィザーモンを犠牲にし、ようやく手にした勝利は結局意味のないものだったのか。
なぜ、ヴァンデモンは生きているというのだ―?
「畜生!」
太一は苛立ちを抑えきれず、地面に転がっていたヴァンデモンのつけていた仮面をけ飛ばした。ころん、ころんと二転し、それはそこで根付いた。
「確かにヴァンデモンは倒したはずなのに…それとも倒しただけじゃダメだっていうことなのか?」
「それじゃああたしたちはずっと閉じ込められたままなの!?」
不安げなミミの声があたりに響いたとき、光子郎のパソコンに一通のメールが届いた。光子郎は急いで地面に座り込み、メールを確かめる。栞を除いた子供たちはその周りに集まった。
心配そうに自分を見上げるイヴモンは珍しく地面に佇んでいた。小さく微笑んでみせる。痛みが完全に消えうせたわけではないが、それでも笑えるくらいの痛みにはなったということを知らせたかった。
「ゲンナイさんからだ!」
その声に栞は視線をそちらに向けた。どうやらメールの差出人はゲンナイだったようだ。
「子供たちよ、喜べ!ヴァンデモンを倒すヒントを見つけたぞ!古代遺跡で見つかった予言の詩じゃ。――“始めに蝙蝠の群れが空を覆った。続いて人々がアンデッドデジモンの王の名を唱えた。そして時が獣の数字を刻んだとき、アンデッドデジモンの王は獣の正体を現した。守人の心の守護を受けし天使たちがその守るべき人のもっとも愛する人へ光と希望の矢を放ったとき、奇跡が起きた”と。では幸運を祈る!」
ぷつりと通信は切れた。どうやら杞憂通り、完全にヴァンデモンを倒したわけでないということが証明され、子供たちは一気に落胆の表情を浮かべた。
「…この霧も晴れる方法は書いてないの?」
「それが…」
眉を寄せた光子郎の姿から、そのようなことは一切書いていなかったのだということが分かってしまった。
ヒカリはくいっと太一の服の裾をつまみ、大きな瞳で彼を見上げた。
「ねえお兄ちゃん。早くお父さんとお母さんのところへ行こう?」
「そうだな…」
「僕も自分の家の様子が…」
「あたし早く着替えたい…」
子供たちの意識が自分の家、家族に逸れ始めた。太一はヤマトと顔を見合わせ、頷く。
「よし、とにかく移動するか」
「栞、立ち上がれる?…私の手をつかんで」
「う、うん。ありがとう、空」
「いいのよ。歩けそう?」
「頑張る、」
「俺が負ぶってやろうか?」
「わ、だっ、大丈夫だよ…!」
慌てて両手をふってついでに首も横にふると、太一はきょとんとしたあと、「そっか?まあ無理すんなよ」と言い残し、先頭を歩き出した。
なぜだろう。なぜかすごく、胸が軋んだ気がした。
back next